補市・市加の算出精度は大丈夫?材工共で歩掛分解できない単価の落とし穴

補正市場単価(補市)・補正市場単価加工(市加)の精度は大丈夫ですか?|積算ソフトで起きる予定価格乖離の原因
積算精度シリーズ #1

補正市場単価(補市)・補正市場単価加工(市加)は、いずれも材工共の単価であり、歩掛に分解して内訳を確認することができません。そのため、算出精度はそのまま積算ソフトの実装精度に依存します。この記事では、補市・市加の違いを整理したうえで、自社の積算環境を見直すためのチェックポイントを解説します。

SEKISAN-PRO編集部

こんな担当者に読んでほしい記事です

  • 補市・市加の算出結果に根拠を説明できない場面がある
  • 年度後半になると予定価格との乖離が大きくなると感じている
  • 改修工事と新営工事で補正率が変わることを意識せずに積算している

1補市と市加の違い

公共建築積算における市場単価系の単価には、以下の2種類があります。混同されやすいですが、別の単価です。

補正市場単価(補市)
物価資料に掲載されている市場単価に対して、改修補正率・週休2日補正率・法定福利費補正率等を乗じて算出した単価。材工共であり、歩掛に分解することはできない。
補正市場単価加工(市加)
補市をベースに、さらに施工規模・工種・現場条件等による加工補正を加えて算出した単価。こちらも材工共であり、歩掛に分解することはできない。電気設備・機械設備工事で多用される。
項目補正市場単価(補市)補正市場単価加工(市加)
ベースとなる単価物価資料掲載の市場単価補市
材工区分材工共(分解不可)材工共(分解不可)
主な用途建築・電気・機械設備全般電気設備・機械設備工事
補正の複雑さ高いさらに高い

2材工共で歩掛に分解できないとどういう問題が起きるか

歩掛に分解できる単価であれば、「材料費がいくら、労務費がいくら」という内訳を担当者が確認・検証できます。しかし補市・市加は材工共のため、ソフトが算出した単価の根拠を数字の内訳から検証することができません。

重要

補市・市加は「ソフトが出した数字を使うしかない」という性質の単価です。だからこそ、ソフト自体の補正計算の精度が積算結果の品質を直接左右します。

歩掛分解できる単価の場合
材料費・労務費の内訳を確認でき、単価の妥当性を担当者が検証できる
補市・市加(材工共)の場合
単価の内訳が見えないため、ソフトの算出精度がそのまま積算精度になる

3補正計算の複雑さとソフト精度の関係

補市・市加の算出には、複数の補正条件を正確に組み合わせる必要があります。

補正の種類内容
新営・改修区分新営と改修で補正率がまったく異なる。改修は工種によって1.00〜1.21と幅がある
執務並行改修補正通常の改修とは別の補正率表を使用する
週休2日補正4週8休・4週7休・4週6休の3段階で補正率が変わる
工種別補正電線管・ケーブルラック・プルボックスなど工種ごとに補正率が異なる
小規模補正建築面積150m²未満・延べ面積300m²未満の工事で別補正が必要
法定福利費補正新営・改修ともに別途乗率が必要
ポイント

これらの補正条件は工種ごと・条件ごとに組み合わせが異なります。積算ソフトがこの複雑な補正ロジックをどこまで正確に実装しているかによって、算出される補市・市加の単価に差が生じます。

4補市・市加の精度が予定価格乖離につながる仕組み

発注者も積算ソフトを使って予定価格を算出しています。発注者側のソフトが補正計算を正確に処理しているのに対して、受注者側のソフトの精度が低い場合、同じ工事でも積算結果に差が生じます。

補市・市加が過大に算出された場合
自社の積算額が予定価格を上回る入札額になりやすく、落札できないリスクが高まる
補市・市加が過少に算出された場合
落札できても実行原価との差が生じ、工事収益を圧迫するリスクがある
注意

補市・市加は材工共で歩掛に分解できないため、算出結果の誤りに気づきにくいという特性があります。年度後半の工事ほど乖離が蓄積しやすい点に注意が必要です。

5自社ソフトを確認する7つのチェックポイント

以下の7項目について、現在使用している積算ソフトで確認してみてください。

1
補市・市加の補正条件を工種別・条件別に正確に設定できるか
新営・改修・執務並行改修・週休2日補正・工種別補正が、それぞれ正確に反映されるか確認してください。
2
単価データは年複数回更新されているか
年1回更新のみのソフトでは、年度途中に労務単価・資材単価が改定されても反映されません。
3
産業廃棄物処分費が自動計上されるか
改修工事では産業廃棄物処分費の計上が必要です。自動計上に対応していない場合、手作業での計上漏れが積算精度を下げる要因になります。
4
スクラップ(有価物)控除に対応しているか
改修工事では撤去した設備のスクラップ価値を工事費から控除する必要があります。
5
小規模工事の補正に対応しているか
建築面積150m²未満・延べ面積300m²未満の小規模工事では別途補正が必要です。
6
仮設・養生の積算精度は確保されているか
仮設工事・養生工事は工事規模や現場条件によって大きく変動します。標準的な仮設・養生費の積算に対応しているか確認が必要です。
7
金抜き設計書をシステムに直接取り込めるか
過去の発注者積算結果(金抜き設計書)をシステムに取り込んで参照できると、補市・市加の算出結果を発注者の積算と照合できます。
ポイント

7項目のうち複数に不安がある場合、積算ソフトの見直しが予定価格乖離の改善につながる可能性があります。

まとめ

01

補正市場単価(補市)と補正市場単価加工(市加)は別物。いずれも材工共であり歩掛に分解できないため、算出精度はソフトに依存する

02

補正計算は新営・改修区分・週休2日補正・工種別補正・小規模補正など多層的で複雑。これを正確に処理できるかがソフトの精度差になる

03

単価データが年1回更新のみのソフトでは、年度後半ほど予定価格との乖離が蓄積しやすい

04

7つのチェックポイントで自社の積算環境を確認し、複数の項目に不安がある場合は積算ソフトの見直しを検討する価値がある

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