執務並行補正を掛けてはいけない工種一覧|予定価格が合わないときの確認ポイント
改修工事の積算では、「改修だから全部に執務並行補正を掛ける」という思い込みが積算ミスにつながります。執務並行改修に区分される工事であっても、補正を掛けてはいけない工種が建築・電気・機械設備のいずれにも存在します。
執務並行改修の補正とは、複合単価等では労務費の所要量を割り増すこと、市場単価等では改修補正率を乗じることを指します。どちらも補正なしの工種では、いずれの操作も行いません。このページでは補正なし工種を工事種別ごとに一覧で整理し、なぜ補正しないのかについての考え方も確認します。
なぜ補正しない工種があるのか
執務並行改修における補正の本質は、「執務者に配慮しながら施工することで、労務費(作業員の手間)が余分にかかる」分を積算に反映することです。複合単価等では労務の所要量を15%または20%割り増し、市場単価等では改修補正率(1.07〜1.20)を乗じることで対応します。
したがって、執務者の存在が労務費に影響しない工種は補正の対象外となります。代表的なパターンは次のとおりです。
- 屋外・地中工事……建物内の執務者との干渉が生じない
- 撤去・とりこわし工事……積算基準上、改修補正の対象外と定められている
- 仮設・土工・地業・基礎躯体……新工事と同様の作業環境で施工される
以下、令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」(国土交通省)の表A-1・表E-1・表M-1をもとに、補正なし工種を整理します。
建築工事の補正なし工種(表A-1)
建築工事で執務並行補正を行わない工種は次のとおりです。複合単価等の労務費割増し(15%増し)も、市場単価等の改修補正率も、どちらも適用しません。
| 工種 | 複合単価等 労務費割増し |
市場単価等 改修補正率 |
備考 |
|---|---|---|---|
| 仮設 | なし | なし | |
| 土工 | なし | なし | |
| 地業 | なし | なし | |
| 鉄筋 | なし | なし | |
| コンクリート | なし | なし | |
| 型枠 | なし | なし | |
| 鉄骨 | なし | なし | |
| 左官(仕上塗材仕上) | なし | なし | 仕上塗材仕上以外は15%増し・改修補正率1.14あり |
| 排水 | なし | なし | |
| 構内舗装 | なし | なし | |
| 植栽 | なし | なし | |
| 仮設(改修) | なし | なし | |
| 撤去 | なし | なし | |
| 外壁改修 | なし | なし | |
| とりこわし | なし | なし |
左官工事は「仕上塗材仕上」と「それ以外」で扱いが異なります。仕上塗材仕上は補正なし、それ以外は15%増しかつ改修補正率(1.14)の対象です。同じ左官でも細目により判断が変わるため注意が必要です。
電気設備工事の補正なし工種(表E-1)
電気設備工事は多くの工種で20%増しが設定されている一方、以下の工種は補正なしです。複合単価等の労務費割増し(20%増し)も市場単価等の改修補正率もどちらも適用しません。また、屋外・共同溝等に施工する工種は原則として補正なしという点が重要です。
| 工種 | 複合単価等 労務費割増し |
市場単価等 改修補正率 |
備考 |
|---|---|---|---|
| 接地工事(屋外) | なし | なし | 屋内は20%増し |
| 架空線路 | なし | なし | |
| 地中線路 | なし | なし | |
| 撤去(再使用しない) | なし | なし | |
| 撤去(再使用する) | なし | なし |
機械設備工事の補正なし工種(表M-1)
機械設備工事も電気同様、屋外・地中・土工・撤去系は補正なしです。複合単価等の労務費割増し(20%増し)も市場単価等の改修補正率もどちらも適用しません。屋外・共同溝等は原則として割増しを行わない点も同様です。
| 工種 | 複合単価等 労務費割増し |
市場単価等 改修補正率 |
備考 |
|---|---|---|---|
| 配管工事(屋外・共同溝) | なし | なし | 屋内一般・機械室・便所は20%増し |
| 配管工事(地中) | なし | なし | |
| 土工事 | なし | なし | |
| 桝類 | なし | なし | |
| インバート改修 | なし | なし | |
| 撤去(再使用する) | なし | なし | |
| 撤去(再使用しない) | なし | なし |
機械設備の配管工事は「屋内一般・機械室・便所(屋上・外壁施工含む)」が20%増しの対象、「屋外・共同溝」「地中」は補正なしと明確に区分されています。同じ配管工事でも施工場所によって判断が変わります。
予定価格が合わないときのチェックポイント
執務並行補正に関連して予定価格との差異が生じやすい典型的なケースを整理します。
補正の掛け過ぎ(過計上)
- 撤去・とりこわし工種に補正を掛けている
- 屋外工事・地中工事に補正を掛けている
- 建築工事の左官(仕上塗材仕上)に補正を掛けている
- 電気の屋外接地工事に20%増しを掛けている
補正の漏れ(過小計上)
- 屋内の接地工事(電気)に補正を掛けていない
- 屋内配管工事(機械)に補正を掛けていない
- 市場単価の改修補正率を複合単価の扱いと混同している
週休2日補正との二重計上
- 市場単価に通常の改修補正率(例:防水1.07)を掛けたうえで、さらに×1.02を重ね掛けしている
単価の種類(複合単価か市場単価か)を確認 → 該当工種が補正対象かを表A-1・E-1・M-1で確認 → 週休2日促進工事の適用有無を確認、の順で確認すると漏れが防げます。
まとめ
- 執務並行改修の補正とは、複合単価等における労務費の所要量割増し(15%または20%増し)と、市場単価等における改修補正率の適用の2種類。補正なし工種ではどちらも行わない。
- 執務並行改修であっても、補正しない工種が建築・電気・機械設備のすべてに存在する。
- 屋外・地中・撤去・とりこわしは原則として補正なし。
- 建築工事の左官は「仕上塗材仕上」か否かで扱いが分かれる。
- 電気の接地工事は「屋内」「屋外」で補正の有無が変わる。
- 機械の配管工事は「屋内一般・機械室」か「屋外・地中」かで補正の有無が変わる。
- 「改修工事だから全工種に補正」という一律の処理は誤りとなる可能性がある。
補正の有無を工種単位で確認する習慣が、積算精度と予定価格への適合度を高めます。
- 国土交通省「公共建築工事積算基準等資料(令和8年改定)」表A-1・表E-1・表M-1(p.19〜21)
- 国土交通省 官庁営繕:公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)
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