金抜設計書とは?

金抜設計書とは何か

金抜設計書とは、発注者が入札や見積り合わせの際に参加者へ交付・公表する設計書のうち、工事の数量や仕様、使用材料などの情報は記載されているが、単価欄と金額欄が空欄になっているものを指します。福島県でも「入札及び見積合わせ金抜設計書」という名称で、電子閲覧システムを通じて入札参加者に交付されています。

長野県が整理・公表している資料によれば、金抜設計書は設計書鏡や総括情報表、工事費内訳書(金抜)などの「契約条件となる設計図書」と、施工内訳表や数量計算書などの「参考図書(契約条件外)」から構成されます。参考図書側の数量や歩掛、積算条件は参考として示されるだけで、契約上の拘束力を持たない点も併せて整理されています。

なぜ金額が入っていないのか

発注者は入札前に、積算基準に基づいて予定価格をあらかじめ算出しています。しかしこの金額は、原則として入札前には公表されません。総務省が示す資料では、予定価格を事前公表しないことのメリットとして「職員に対する予定価格を探る行為などの不正行為の防止が可能となること」を挙げています。逆に事前公表した場合のデメリットとしては、「積算能力が不十分な事業者でも、事前公表された予定価格を参考にして受注する事態が生じること」「談合が一層容易に行われる可能性があること」が指摘されています。

金抜設計書に金額欄が設けられていないのは、こうした不正行為の防止と入札の公正性確保のための措置だと理解しておけば十分です。

金抜設計書は、いわば「発注者の答えが消された問題用紙」です。数量と仕様という問題文は与えられますが、答え(金額)は自社で積算基準に沿って再現する必要があります。これが福島県の公共工事における積算の出発点です。

金入設計書との違い

単価と金額が記入された設計書は「金入設計書」と呼ばれ、金抜設計書はここから金額部分だけを取り除いた形になっています。福島県の土木設計マニュアルが示す添付書類の一覧でも、同じ書類群について金入は「根拠資料添付」、金抜は「単価のみ削除」という形で区分されており、両者が同一の設計内容を土台にしていることが分かります。金入設計書の詳しい役割については別記事「金入設計書とは?」をご参照ください。

初心者がまず見るべきポイント

金抜設計書を開いたら、まず次の欄を確認します。

  • 数量欄:工種・種別・細別ごとの数量。積算の起点になる情報です。
  • 仕様欄:材料の規格やグレードなど、どの単価を選ぶかを左右する条件です。
  • 摘要欄:単価適用に関わる補足記載です。福島県の設計書特有のコード表記については別記事で詳しく扱っています。
  • 内訳書の階層:共通仮設費・直接工事費といった区分と、工種の並び順。

これらは金額欄が空欄であっても、発注者がどのような前提で予定価格を組み立てているかを読み取るための重要な手がかりになります。

金抜設計書を使って何をするのか

金抜設計書は、積算を始めるための土台です。記載された数量と仕様に対し、県の積算基準や単価表、物価本、代価表などを一つずつ当てはめて単価を決め、積み上げていくことで、発注者が算出したであろう予定価格に近づけていきます。

ここで行うのは自社の施工コストを計算する「見積り」ではありません。発注者の積算ルールをそのままなぞり、予定価格を再現・推定する作業である点に注意してください。自社の感覚で単価を選ぶと、予定価格の推定精度は大きく落ちます。

数量積算(数量調書の作成)を行わない読者にとって、金抜設計書は最初から数量が与えられた状態でスタートできる資料です。この先の単価適用や積算基準の具体的な使い方は、本シリーズの各記事で順に扱っていきます。

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