「その他率」はなぜ廃止されたのか?令和8年改定の背景を整理する
令和8年3月改定の公共建築工事標準単価積算基準で、各歩掛り表の末尾に一式計上されていた「その他」(その他率)が廃止されました。廃止の理由は、工種ごとに異なっていた率を全工種共通の「専門工事業者等の諸経費」に統一し、労務費に対応する経費を発注者の積算上で明確化するためです。担い手3法への対応として、雇用に伴う必要経費の確保を積算上で可視化する改定の一環として行われました。
改定前の「その他」とはどういうものだったか
改定前の公共建築工事標準単価積算基準では、複合単価の構成要素として「その他」という区分が設けられていました。国土交通省の新旧対照表(令和8年改定)に記載された改定前の総則条文によれば、「その他」の定義は次のとおりです。
改定前の定義(総則 第2編)
「その他」は、製造業者・専門工事業者の諸経費(下請経費)、小器材の損耗費、現場労働者に関する法定福利費等であり、「その他」の率対象に「その他」の率を乗じて算定する。
各歩掛り表の末尾には「その他 式 1」という行があり、注記(注 ○. 「その他」の率対象は〇〇とする)でその工種の率対象が指定されていました。率の大きさは工種ごとに定められた表(表3-1-1 建築工事・表3-1-2 電気設備工事・表3-1-3 機械設備工事)から読み取る仕組みでした。
電気設備工事(表3-1-2)の場合、配管工事・配線工事では「その他」の率が20〜30%、率対象は「労(労務費)」とされていました。他の工種でも率の水準や対象範囲が異なり、工種ごとに個別の設定を確認する必要がありました。
令和8年改定で何が変わったか
令和8年3月11日改定で、「その他」は廃止され「専門工事業者等の諸経費」に置き換えられました。改定後の変化を整理すると、以下のとおりです。
| 改定前(その他) | 改定後(専門工事業者等の諸経費) | |
|---|---|---|
| 名称 | その他 | 諸経費 |
| 率の設定方法 | 工種ごとに異なる(表3-1-1〜3) | 全工種共通(表3のみ) |
| 率の区分 | 一本の率(例:20〜30%) | 労務費(労)と材料費等(労以外)の2区分 |
| 率の水準 | 工種・工法により異なる | 労務費(労):42〜52%、材料費等(労以外):9〜13% |
| 歩掛り表の記載 | 末尾に「その他 式 1」、率対象は注記 | 末尾に「諸経費 式 1」、各要素に(労)(労以外)区分を明示 |
歩掛り表の見た目も変わっています。改定後の表には「率を乗ずる歩掛りの区分」という列が追加され、各材料・労務の行に(労)か(労以外)かが直接記されています。これにより、どのコスト要素に何%の諸経費が乗るかが一目でわかるようになりました。
廃止・変更の目的
変更の目的は、国土交通省の令和8年3月11日付プレスリリース(「公共建築工事積算基準類の改定 ~雇用に伴う必要経費の確保に向けて~」)に明記されています。
廃止の目的(一次資料より)
「実態調査を実施し、諸経費の率を改定。工種ごとに定めていた率を、『材料費、消耗材料費等』と『労務費』のそれぞれに全工種共通の率を設定することに改める。」
「雇用に伴う必要経費が確保されていることが、発注者の積算において明確になる」
大きく2つの目的があります。第一に簡素化と統一です。建築・電気設備・機械設備など工種ごとに異なる率表(表3-1-1〜3)を一本の表(表3)に統合することで、積算上の煩雑さが解消されました。第二に労務費の明確化です。従来の「その他」は労務費・材料費などが混在した率でしたが、改定後は「労務費(労)」と「材料費・消耗材料費等(労以外)」に分けて率を乗じる構造になり、労務費に対する下請経費が積算上で独立して計算されます。
これにより、発注者が予定価格を設定する段階で、公共工事設計労務単価水準に相当する労務費(賃金の原資)が確保されていることを確認できるようになっています。
積算実務への影響
積算実務上は、歩掛り表を参照する際の見方が変わります。改定後は各要素の行に(労)(労以外)が明示されているため、率対象を注記から読み解く手間がなくなっています。一方、率水準は従来の「その他」率(例:配線工事20〜30%)と単純には比較できません。対象が「労務費のみ」から「労務費42〜52%、材料費等9〜13%」に分かれる構造になっているためです。
注意:率の計算対象が「労」(労務費)と「労以外」(材料費・消耗材料費等)に分かれた点がポイントです。改定前の「その他」率と改定後の「諸経費」率は、対象範囲が異なるため数字の大小だけで単純比較することはできません。
積算システムRIBCは令和7年12月18日にリリースされた対応版で対応済みであり(Q&A集Q5より)、令和8年3月11日改定分も含めた更新が行われています。
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タイトル案①:「その他率」廃止の理由とは何か(令和8年改定)
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タイトル案③:その他率から専門工事業者等の諸経費へ(令和8年改定)
メタディスクリプション:公共建築工事標準単価積算基準の令和8年改定で、歩掛り表の末尾にあった「その他(1式)」(その他率)が廃止されました。廃止の背景にある担い手3法対応と、改定後の「専門工事業者等の諸経費」との違いを解説します。(120文字)

