なぜEM-EEFは単位施工単価になったのか?令和8年改定の背景を解説
令和8年3月改定の公共建築工事標準単価積算基準で、EM-EEF(600Vポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースケーブル平形)が新たに単位施工単価として設定されました。目的は「労務費の見える化」です。担い手3法の要請を受け、これまで市場単価として材工一式で積算されていた絶縁ケーブルに、労務費と材料費が個別に把握できる新しい単価区分が導入されました。
EM-EEFとは何か
EM-EEFは「600Vポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースケーブル平形」の規格略称です。EMはエコマテリアル(Eco Material)を指し、EEFはそのケーブル種別記号です。電気設備工事の配線工事において広く使用される電力用ケーブルで、ノンハロゲン・低煙・低毒性を特徴とし、現在の電気設備工事における標準的な選択肢の一つとなっています。
令和8年改定後の第3編電気設備工事では、配線工事の単価種別として以下の区分が設けられています。
| 種別 | ケーブル種別 | 単価区分 | 表番号 |
|---|---|---|---|
| 電線 | EM-IE(600V耐燃性ポリエチレン絶縁電線) | 市場単価 | 表E1-1-26 |
| ケーブル | EM-EEF(600V絶縁ケーブル平形) | 単位施工単価 | 表E1-1-27・28 |
市場単価と単位施工単価の違い
令和8年改定以前、EM-EEFは市場単価として積算されていました。市場単価とは、元請と下請の専門工事業者間の取引調査に基づく「材工一式」の単価です。材料費・労務費・下請経費等がまとめて一式の価格に含まれており、内訳は分かりません。
単位施工単価の特徴
単位施工単価は、複合単価の積み上げ手法と市場取引調査を組み合わせた単価です。「ベース単価」と「シフト単価」の2種類があり、ベース単価は歩掛りから労務費・材料費を積み上げて算定するため、労務費と材料費の内訳が把握できます。
EM-EEFのベース単価(表E1-1-28)は「2.0㎜-3C 二重天井内等配線」が代表規格に設定されており、電工(0.017人)・600V絶縁ケーブル(1.15m)・雑材料(材料価格×0.03)の構成で歩掛りが公表されています。
なぜ令和8年にEM-EEFが選ばれたのか
単位施工単価の導入は段階的に進められています。国土交通省の令和8年3月11日付プレスリリース(「公共建築工事積算基準類の改定 ~雇用に伴う必要経費の確保に向けて~」)によれば、令和7年12月に鉄筋(ガス圧接含む)・型枠の単位施工単価が導入された後、令和8年3月に絶縁ケーブルが追加対象となりました。
単位施工単価導入の経緯(一次資料確認)
令和7年12月:鉄筋(ガス圧接含む)・型枠に単位施工単価を導入
令和8年3月:絶縁ケーブル(EM-EEF)に単位施工単価を追加導入
今後:他の市場単価工種についても、順次調査・分析中(Q&A集Q6より)
絶縁ケーブルが対象に選ばれた直接的な理由は、歩掛り調査が実施できたことです。単位施工単価のベース単価は実際の施工調査に基づき算定されるため、データ収集・分析が可能な工種から順次設定される仕組みになっています。
導入の背景:担い手3法と労務費の見える化
国交省Q&A集(令和8年3月11日更新)では、単位施工単価の目的について「これまで『材工一式』であった市場単価について、労務費の見える化を図るため導入されたもの」と説明しています。
背景にあるのは、令和7年12月に中央建設業審議会から勧告された「労務費に関する基準」(いわゆる担い手3法の一環)です。公共工事の発注者には、市場単価方式であっても積算上の労務費水準を把握し、適正な賃金原資が確保されているかを確認する要請が生じています。EM-EEFへの単位施工単価設定はこの流れの中にあります。
福島県への反映時期:福島県では国交省基準より約半年遅れて適用されることが多く、令和8年3月11日改定の適用時期については発注機関ごとに確認が必要です。
積算実務への影響
実務上の変化として、EM-EEFの積算では物価資料のシフト単価を基本とすることになります。ベース単価を用いる場合は工事場所の公共工事設計労務単価から算定します。積算システムRIBCは令和7年12月18日時点でリリースされた対応版で対応済みです(Q&A集Q5より)。
また、内訳書標準書式(設備工事編)にも労務費等の記載欄が追加されており、EM-EEF相当分の労務費を入札参加者が記載する対応が求められるようになっています。

