公共建築工事の共通費計算例|直接工事費2,000万円から請負金額を算出してみた

積算実務・計算実演

公共建築工事の共通費計算例|直接工事費2,000万円から請負金額を算出してみた

公共建築工事共通費積算基準(令和8年改定)の算定式で、直接工事費2,000万円・工期6か月の設例を実際に計算します

こんな方におすすめの記事です
  • 共通仮設費率・現場管理費率・一般管理費等率の意味はわかるが、実際の金額計算がイメージできない
  • 自分の担当工事で「結局いくらになるのか」を手を動かして確認したい
  • 率をかける基礎金額(直接工事費/純工事費/工事原価)を毎回混同してしまう
この記事の結論
  • 共通費の計算は「直接工事費 → 純工事費 → 工事原価 → 請負金額」という一本道の積み上げ
  • 各段階の率は、それぞれ直前の段階の金額を基礎に算定される
  • 直接工事費2,000万円・工期6か月の設例では、請負金額(税抜)は約2,925万円(直接工事費比+約46.3%)
  • 率は工事費の規模・工期・工種によって変わるため、他の工事にそのまま流用できない
1共通費積算基準の全体構造をおさらい

公共建築工事の工事費は、直接工事費に共通費(共通仮設費・現場管理費・一般管理費等)を段階的に積み上げて算定します。3つの率は、それぞれ「何にかかる率か」が異なるのがポイントです。

費目算定の基礎算定後にできる金額
共通仮設費直接工事費純工事費(直接工事費+共通仮設費)
現場管理費純工事費工事原価(純工事費+現場管理費)
一般管理費等工事原価請負金額(工事原価+一般管理費等)

後の段階に進むほど、率をかける対象の金額自体が膨らんでいきます。積み上げの順番と基礎金額の対応を取り違えないようにしましょう。

2各率の算定式(建築工事・新営)

公共建築工事共通費積算基準(令和8年改定)では、共通仮設費率・現場管理費率は指数関数式、一般管理費等率は常用対数式で算定されます(国土交通省「公共建築工事共通費積算基準における共通費の算定について」より)。

費目算定式(建築工事・新営)変数
共通仮設費率(Kr)Exp(3.346-0.282×logeP+0.625×logeT)P:直接工事費(千円)/T:工期(か月)
現場管理費率(Jo)Exp(5.899-0.447×logeNp+0.831×logeT)Np:純工事費(千円)/T:工期(か月)
一般管理費等率(Gp)32.597-3.591×log10CpCp:工事原価(千円)
式を使うときの注意

率は小数点以下第3位を四捨五入して2位止めで使用します。改修工事・電気設備工事・機械設備工事は係数が異なるため、必ず該当する工種の式を使ってください。本記事は建築工事・新営の係数で計算しています。

3設例:直接工事費2,000万円・工期6か月で計算

P(直接工事費)=20,000千円、T(工期)=6か月として、順番に計算します。工期は本記事の設例上の仮定です。実際の工事では契約工期を使って計算し直してください。

Step1:直接工事費 → 純工事費
項目金額・数値
直接工事費(P)20,000,000円
共通仮設費率(Kr)5.33%
共通仮設費(=P×Kr)1,066,000円
純工事費(=P+共通仮設費)21,066,000円
Step2:純工事費 → 工事原価

公共建築工事の共通費計算では、率を掛けて算出した金額は一円未満切り捨てとするルールがあります(国土交通省「公共建築工事積算基準等資料」より)。

項目金額・数値
純工事費(Np)21,066,000円
現場管理費率(Jo)18.88%
現場管理費(=Np×Jo、一円未満切り捨て)3,977,260円
工事原価(=Np+現場管理費)25,043,260円

この時点で、直接工事費からの増加率はすでに約25%です。

Step3:工事原価 → 請負金額
項目金額・数値
工事原価(Cp)25,043,260円
一般管理費等率(Gp)16.80%
一般管理費等(=Cp×Gp、一円未満切り捨て)4,207,267円
請負金額・税抜(=Cp+一般管理費等)29,250,527円

一般管理費等率は工事原価300万円以下は20.11%固定、30億円超は9.34%固定、その間は算定式を使用します。今回は算定式の適用範囲内です。

計算結果

直接工事費2,000万円の工事は、共通費を含めると請負金額が29,250,527円となり、直接工事費の約1.46倍になります。参考までに消費税相当額(10%)を加えた税込の金額感は32,175,579円(約3,218万円)です。内部の積算根拠(税抜)と対外的な契約金額(税込)を混同しないようにしましょう。

4実務で間違えやすいポイント
率をかける基礎金額の取り違え

現場管理費率を直接工事費にかけてしまう、一般管理費等率を純工事費にかけてしまうといった取り違えが起きがちです。「共通仮設費率は直接工事費」「現場管理費率は純工事費」「一般管理費等率は工事原価」という対応関係を、計算のたびに確認しましょう。

工期の設定を適当にしてしまう

共通仮設費率・現場管理費率は工期(T)の影響を大きく受けます。契約書・工程表に記載された工期を正確に使ってください。見積り段階で工期が未確定の場合は、想定工期を根拠資料に明記しておくと後で説明しやすくなります。

工種ごとの係数違いを見落とす

本記事は建築工事・新営の係数です。改修工事・電気設備工事・機械設備工事はそれぞれ異なる係数のため、自分が積算している工種に対応した式を必ず確認してください。

5工事規模が変わると率も変わる

共通仮設費率・現場管理費率・一般管理費等率は、いずれも工事費の規模が大きくなるほど率が下がる傾向にある指数・対数の式で算定されます。同じ工種・同じ工期でも、直接工事費1,000万円の工事と5,000万円の工事とでは率がまったく異なります。「前に担当した近い金額の工事の率をそのまま使う」というやり方は避け、案件ごとに計算し直すのが基本です。

6福島県での適用時期
確認事項内容
適用開始日福島県では例年、国の改定から半年程度遅れて適用される傾向があります。実際の適用日は福島県土木部等の通知をご確認ください
それまでの取扱い原則として令和7年改定版の基準(旧算定式・旧係数)で積算
積算システム共通仮設費率・現場管理費率・一般管理費等率の計算式が新基準の係数に更新されているか要確認

令和8年改定は国交省では2026年3月11日から適用されています。積み上げの構造そのもの(直接工事費→純工事費→工事原価→請負金額)は旧基準・新基準で大きく変わるものではないとみられますが、係数は必ず最新のものを確認してください。

まとめ
  1. 共通費の計算は「直接工事費→純工事費→工事原価→請負金額」の一本道
  2. 各段階の率は、それぞれ直前の段階の金額を基礎に算定される
  3. 直接工事費2,000万円・工期6か月の設例では、請負金額(税抜)は約2,925万円
  4. 率は規模・工期・工種で変わるため、案件ごとに計算し直す
  5. 福島県では国の改定から半年程度遅れて適用される傾向があるため、最新の通知を確認する
本文の算定式・係数は国土交通省「公共建築工事共通費積算基準における共通費の算定について」(建築工事・新営)に基づき計算しています。率を掛けて算出した金額の一円未満切り捨ては、国土交通省「公共建築工事積算基準等資料」の記載に基づきます。工期6か月は本記事独自の設例です。令和8年改定の最終版で係数変更がないかは、一次資料(公共建築工事共通費積算基準 令和8年改定)で必ず照合してください。改修工事・電気設備工事・機械設備工事で計算する場合は、該当工種の係数に差し替えて再計算が必要です。
積み上げの流れ
直接工事費 20,000,000円
+共通仮設費(Kr 5.33%)
純工事費 21,066,000円
+現場管理費(Jo 18.88%)
工事原価 25,043,260円
+一般管理費等(Gp 16.80%)
請負金額(税抜)29,250,527円

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