積算ノウハウの引き継ぎで失敗する会社の特徴

積算担当者の引き継ぎ。
建設業では昔からの課題だと思います。
図面の読み方。
数量の拾い方。
単価の考え方。
見積書のまとめ方。
積算業務には言葉では説明しにくい部分があります。
そのためでしょうか。
積算担当者が退職すると決まったとき、
慌てて引き継ぎを始める会社も少なくありません。
ただ、
私がこれまで見てきた中で感じるのは、
引き継ぎで失敗する会社には共通点があるということです。
一番多いのは、
引き継ぎ期間があれば何とかなると思っている会社です。
例えば、
定年退職まで3か月。
退職まで半年。
それだけあれば十分だと思うかもしれません。
でも実際は違います。
積算の仕事は手順だけ教えれば終わる仕事ではありません。
なぜその単価を選んだのか。
なぜその見積書を採用したのか。
なぜその数量を確認したのか。
そういった判断の積み重ねです。
問題は、
長年積算をやっている本人ほど、
その判断を言語化できないことです。
本人にとっては当たり前です。
当たり前過ぎて説明していません。
「昔からこうしている」
「過去案件を参考にした」
「経験的にそう思った」
でも後任者からすると、
そこが一番知りたい部分です。
結果として、
作業手順だけ引き継がれます。
考え方は引き継がれません。
そして退職後、
同じように積算したつもりなのに結果が違う。
そんなことが起こります。
もう一つの特徴があります。
資料が残っていない会社です。
積算根拠。
検討資料。
過去の見積。
金入設計書。
比較した案件。
積算担当者のパソコンの中には残っている。
でも、
会社の資産として整理されていない。
こういう会社は意外と多い気がします。
引き継ぎというと、
人から人へ知識を渡すことをイメージします。
しかし実際には、
人より先に資料を引き継ぐべきなのかもしれません。
過去案件を見れば分かる。
積算根拠を見れば分かる。
判断理由が残されている。
そういう状態なら、
担当者が変わっても業務は続きます。

逆に、
資料が無い状態では、
退職した担当者に電話するしかありません。
実際、
退職後に連絡が来る話を聞いたこともあります。
本人も大変です。
会社も大変です。
そして、
私が最も危険だと思うのは、
後任者を決めていない状態です。
積算担当者が辞める。
そのときになって、
「誰かやってくれ」
となる。
これでは厳しいと思います。
積算は今日覚えて明日できる仕事ではありません。
図面に慣れる時間。
設計書に慣れる時間。
単価に慣れる時間。
失敗する時間。
どうしても必要です。
だから引き継ぎは、
退職が決まってから始めるものではなく、
普段から始めるものなのだと思います。
副担当を決める。
資料を整理する。
積算根拠を残す。
過去案件を共有する。
地味なことばかりです。
でも、
こうした積み重ねがない会社ほど、
積算担当者が退職したときに大きな問題になります。
実は、
積算ノウハウの引き継ぎで失敗する会社は、
引き継ぎが下手な会社ではありません。
引き継ぎを考えなくても仕事が回っていた会社です。
担当者が優秀だった。
会社もその人を信頼していた。
だから任せていた。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、
その人がいなくなった後の準備をしていなかった。
問題があるとすればそこなのだと思います。
最近、
積算ノウハウとは知識ではなく、
仕組みとして残すものなのかもしれない。
そんなことを考えています。

