積算担当者が退職したら会社はどうなる?落札件数が半減した会社の話

積算担当者が退職したら会社はどうなる?落札件数が半減した会社の話

私が知っている会社で、積算担当者が1人退職しただけで落札件数が半減し、年間売上が3,000〜4,000万円下がったところがあります。年商3〜4億円規模の会社の話です。

この記事の結論

積算担当者の退職は、現場担当者の退職よりも受注力への影響が大きくなることがある。その理由を実際に見てきた経験から整理します。

落札件数が半減するとはどういうことか

最初にお伝えしたケースを少し詳しく説明します。

年商3〜4億円規模の建設会社で、長年積算を担当していた方が退職しました。後任はいませんでした。

その後、何が起きたか。

入札に参加できる件数が減りました。

公共工事の入札は、公告が出てから期間が決まっています。その期間内に積算を終えて金額を決めなければなりません。積算担当者がいなければ、この作業自体が回りません。

「今回は無理」「この案件は見送ろう」という判断が増え、入札参加件数が減りました。

さらに問題だったのは、参加できた案件でも積算精度が落ちていたことです。担当者が変わったことで、予定価格との乖離が広がり、落札率も下がりました。

実際の影響(複合効果)

入札参加件数の減少に加え、落札率の低下も重なり、年間売上が3,000〜4,000万円下がりました。年商3〜4億円規模の会社で、積算担当者1人の退職が引き金になったケースです。

現場担当者が退職した場合、その工事が終われば次の仕事を受注できます。しかし積算担当者がいなければ、そもそも入札に参加できません。参加できたとしても、積算精度が落ちれば落札できません。大きなリスクです。

なぜ積算担当者の代替がきかないのか

積算担当者の退職リスクが軽視されやすい理由の一つは、「すぐには影響が見えない」ことだと思います。

現場担当者が退職すれば、翌日から現場が回らなくなります。しかし積算担当者がいなくなっても、進行中の工事はそのまま続きます。影響が出るのは次の入札からです。

そしていざ困ってから気づくのですが、積算担当者はすぐに育てられません。

積算ソフトの操作は比較的早く覚えられます。しかし、

  • 積算基準の読み方
  • 金入設計書の確認ポイント
  • 発注者ごとの特徴や注意点
  • 入札結果の分析と予定価格の読み方

こうした知識は、経験を重ねて初めて身についていきます。退職してから採用活動を始めても、すぐに穴は埋まりません。

「積算担当者がいなければ外注すればいい」という考え方もあります。ただし積算外注は時間・コスト・情報共有の面で課題が多く、すべての案件を外注で回すのは現実的ではないと感じます。

積算担当者の頭の中にあるものが会社から消える

もう一つ、見落とされやすいリスクがあります。

積算担当者は日々、

  • 入札結果の傾向
  • 自治体ごとの設計書の特徴
  • 積算基準の改定内容
  • 過去の失敗事例と対処法

こうした情報を蓄積しています。

しかしこれらは、マニュアルに書かれていないことがほとんどです。その人の経験と記憶の中にあります。

退職すれば、知識も一緒に会社を出ていきます。

積算担当者が複数いる会社であれば、1人が退職してもある程度カバーできます。問題は担当者が1人しかいない状態です。

中小企業では、積算の実務はすべて担当者が行い、社長は内容を確認するだけというケースも少なくありません。社長よりも担当者のほうが積算に詳しい、という状況です。その担当者が抜けたとき、会社の中に積算のノウハウが何も残っていないという状態になります。

今からできることは何か

私が思う優先順位は、まずデータを残すことです。人が育つには時間がかかりますが、データは今日から残せます。

有効な対策は?

1
金入設計書のデータベース

発注者・工事種別・年度ごとに整理して保存します。後任者が予定価格を推定するときの一番の手がかりになります。担当者の頭の中にあるだけでは、退職と同時に消えます。

2
入札結果の分析データ

落札率・落札者・自社の結果を案件ごとに記録しておきます。積算の精度検証に使えるだけでなく、後任者が「この発注者はどういう傾向か」を学ぶ教材になります。

3
積算ナレッジと積算ソフト設定を残す

積算担当者が持っている知識は、意外と個人の経験に依存しています。箇条書きでよいので記録し、会社の知識資産として定期的に棚卸・保存しておくことが有効です。例えば、

  • 積算ソフトの設定値・共通費設定
  • 補正市場単価の扱い方
  • 市区町村ごとの特殊なルールや金額の丸め方
  • 自社独自の運用ルール(処分費・スクラップ等の設定方法)

ソフトは残っていても、設定とナレッジが消えていれば一から作り直しになります。

まとめ
  • 積算担当者の退職は、入札参加件数の減少と落札率の低下が重なり受注力に直結する
  • 年商3〜4億円規模でも、その複合効果で年間3,000〜4,000万円の売上減につながることがある
  • 影響がすぐに見えないため、対策が後回しになりやすい
  • 積算担当者の育成には時間がかかり、退職後に動いても間に合わない
  • 金入設計書・入札結果・積算ナレッジと積算ソフト設定の3つを記録として残すことから始める

私は積算担当者の価値は思った以上に大きいと思っています。

現場担当者がいなければ工事はできません。ただ、積算担当者がいなければその工事を受注することすらできません。

積算担当者が退職してから慌てる会社よりも、退職する前から準備できる会社の方が長く勝ち続けるのではないでしょうか。

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