部分引渡し・既済部分検査とは?

公共工事の契約約款には、前払金や部分払のほかにも、工事の一部が完成した段階で発注者が引渡しを受ける「部分引渡し」と、そのために行われる検査に関する定めがあります。今回は福島県工事請負契約約款の条文を確認しながら、この2つの仕組みを整理します。

部分引渡しとは何か

福島県工事請負契約約款第39条(部分引渡し)は、次のように定めています。

福島県工事請負契約約款 第39条(部分引渡し)第1項

「第32条及び第33条の規定は、工事目的物について、発注者が設計図書において工事の完成に先だって引渡しを受けるべきことを指定した部分(以下「指定部分」という)がある場合において、当該指定部分の工事が完了したときについて準用する。」

出典:福島県工事請負契約約款(令和3年3月26日最終改正)第39条

つまり部分引渡しとは、工事全体が完成する前でも、設計図書であらかじめ「指定部分」と定められた範囲の工事が完了した時点で、その部分だけを発注者に引き渡す仕組みです。国土交通省の公共工事標準請負契約約款においても、同じく第39条(部分引渡し)に同内容の規定があり、条番号・条文の構造は一致しています。

第39条は独立した検査手続きを新設するのではなく、工事完成時の検査・引渡しを定めた第32条(検査及び引渡し)と、代金支払いを定めた第33条の規定を、指定部分について読み替えて準用する形をとっています。第32条第1項では受注者が工事完成を発注者に通知する義務が、第5項では発注者が引渡しを請求できる旨が定められており、これらが「指定部分に係る工事」として部分引渡しにも適用されます。

指定部分は工事の途中で任意に決められるものではなく、設計図書であらかじめ明示されている必要があります。入札段階で金抜設計書や特記仕様書に部分引渡しの指定部分が記載されているかどうかを確認することが、予定価格の構成を読み解くうえでの出発点になります。

既済部分検査とは何か

既済部分検査は、工事が完成する前に、すでに出来上がっている部分(既済部分)の出来形を発注者側が確認するために行う検査です。福島県工事請負契約約款・国土交通省の公共工事標準請負契約約款のいずれの条文本文にも「既済部分検査」という語そのものは記載されていませんが、この検査を受注者が発注者へ請求する際に用いる様式は、国土交通省の地方整備局において「請負工事既済部分検査請求書」という名称で公開されており、実務上の呼称として定着しています。

第38条第2項以降には、受注者が部分払を請求する前に、出来形部分について発注者(監督員)の確認を受けるための検査を請求し、発注者が受注者立会いのもとで検査を行う手続きが定められています。既済部分検査とは、この第38条に基づく出来形確認の検査、および第39条による部分引渡しの前提となる出来形確認を指す実務上の呼び名です。つまり既済部分検査それ自体が独立した条文を持つ制度ではなく、部分払・部分引渡しという2つの制度を機能させるための「確認行為」にあたります。

「既済部分検査」という条見出しは約款条文に存在しないため、本記事では第38条・第39条の条文内容から確認できる範囲のみを記載しています。検査の具体的な実施期限・立会い方法などの細目は、発注案件ごとの設計図書・監督要領を必ず確認してください。

前払金・部分払との違い

これまでの記事で確認した前払金(第35条、契約金額の40%を工事着手前に支払う制度)・部分払(第38条、工事期間中に出来高に応じて支払う制度)は、いずれも「お金の支払い」に関する制度です。これに対し部分引渡しと既済部分検査は、「工事の完成部分をどう扱うか」という手続き面の制度である点が異なります。

制度 根拠条文 内容
前払金 第35条 契約金額の40%を工事着手前に支払う
部分払 第38条 工事期間中、出来高に応じて代金の一部を支払う
部分引渡し 第39条 指定部分の工事完了時に、その部分を発注者に引き渡す
既済部分検査 第38条・第39条の運用(条見出しなし) 部分払・部分引渡しの前提となる出来形確認の検査

積算の立場では、指定部分の有無や部分払の対象範囲が設計図書に明記されているかどうかで、工期・支払条件の構成が変わってきます。予定価格の推定作業そのものに直接影響する項目ではありませんが、金抜設計書とあわせて特記仕様書を確認する際のチェックポイントとして押さえておくとよいでしょう。

結論

部分引渡し(第39条)は、指定部分の工事完了時にその部分を発注者へ引き渡す制度です。既済部分検査は、部分払(第38条)・部分引渡し(第39条)の前提として既済部分の出来形を確認する検査を指す実務上の呼び名であり、条文上に独立した見出しを持つ制度ではありません。前払金・部分払が「支払い」の制度であるのに対し、この2つは「完成部分の引渡し・確認」に関する手続きである点を押さえておきましょう。

参照した一次資料

福島県工事請負契約約款(令和3年3月26日最終改正)第32条・第38条・第39条: https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/516206.pdf
公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会決定)第32条・第38条・第39条: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499463.pdf

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