ベース単価とシフト単価の違いとは?単位施工単価の仕組みを解説

積算担当の皆様、お疲れ様です!SEKISAN-PROです。
令和7〜8年改定で登場した「単位施工単価」。その中にベース単価シフト単価という2種類があることをご存じですか?「名前は聞いたけど、何が違うのかよくわからない」という方に向けて、今回は仕組みの背景を実務者目線で解説します。

最初にお伝えしたいこと

ベース単価やシフト単価の計算を、積算担当者が実務で行うことはほとんどありません。

実際の積算では、営繕積算システムや積算ソフトが自動的に処理します。

そのため、
  • 算定式を暗記する必要はありません
  • 手計算できるようになる必要もありません
  • ベース単価とシフト単価の違いを理解しておけば十分です

本記事では、令和7〜8年改定の背景である「なぜこの仕組みが導入されたのか」を理解することを目的に解説します。
結論

ベース単価とシフト単価は、公共建築工事の積算における「単位施工単価」の2種類です。

ベース単価:代表的な規格・仕様について、労務費・材料費を積み上げて算定した基準単価。1工種につき1個だけ設定される。

シフト単価:それ以外の規格・仕様について、ベース単価を市場取引調査結果の比率で調整して算定した単価。1工種につき複数設定される。

2層構造にする理由は「歩掛り調査の効率化」です。全規格をゼロから調査するのではなく、代表規格だけ精密に調査し、残りはその比率で展開することで、内訳の見える化を効率的に実現しています。

そもそも「単位施工単価」とは(前提の整理)

単位施工単価とは、複合単価の算定方法と元請業者・下請専門工事業者間の取引調査結果を組み合わせた積算単価です。従来の市場単価が「内訳の見えない完成品の1本値」であったのに対し、単位施工単価は材料費・労務費の内訳が把握できる点が最大の特徴です。

この単位施工単価には、算定方法の異なる2種類があります。それがベース単価シフト単価です。

なぜ単位施工単価が生まれたか

令和6年6月の第三次・担い手3法改正により、建設業法で「材料費等記載見積書」の作成が努力義務化されました。さらに公共工事入札時には材料費・労務費等の内訳を記載した書類の提出が義務化(入契法第12条)。内訳が見えない市場単価のままでは対応できないことから、単位施工単価が導入されました(国土交通省 令和7年12月10日プレスリリースより)。

ベース単価とは何か

ベース単価は、細目工種を代表する規格・仕様について設定される基準単価です。複合単価と同じ手法で、労務費・材料費・機械器具費・専門工事業者等の諸経費を積み上げて算定します。

ベース単価の特徴

  • 1工種につき1個だけ設定
  • 複合単価方式で積み上げ算定
  • 専門工事業者等の協力で歩掛り調査を実施
  • 工事場所の材料単価・労務単価を適用
  • 物価資料にも参考掲載される

ベース単価の算定式(イメージ)

公共工事設計労務単価 × 労務歩掛り
+ 材料単価 × 材料歩掛り
+ 機械損料 × 運転日数
+(労務+材料+機械)× 諸経費率
ベース単価

鉄筋の具体例:ベース単価の歩掛り

鉄筋工事のベース単価(RCラーメン構造・階高3.5〜4.0m程度・形状単純)の歩掛りは以下のとおりです。鉄筋主材は別途計上です。

名称 摘要 単位 所要量 備考
鉄筋工 1.88(0.5) 括弧内は工場加工相当分
普通作業員 0.38(0.21) 括弧内は工場加工相当分
結束線 #21 kg 3.6
工場管理費 1 (労)×(30〜50%)
率対象:鉄筋工(工場加工相当分)・普通作業員(工場加工相当分)
その他 1 率対象:鉄筋工・普通作業員・結束線・工場管理費のすべて

出典:国土交通省「公共建築工事積算基準類の改定〜労務費等の見える化へ〜」(令和7年12月10日)別紙

型枠の具体例:ベース単価はこの1規格だけ

型枠工事の場合、ベース単価として選ばれているのは次の1規格だけです。

型枠のベース単価(代表規格)
普通合板型枠 ラーメン構造 地上軸部 階高3.5〜4.0m程度

この規格について、実際の歩掛り調査が行われ、以下のとおり積み上げで算定されます。

名称 摘要 単位 所要量 備考
合板(表面加工品) 型枠用 900×1,800×12t 1.08 損料率25%
型わく工 0.15
普通作業員 0.02
補助材(構成材) 1 (労+材)×20%
その他 1 率対象:合板・型わく工・普通作業員・補助材(構成材)のすべて

出典:国土交通省「公共建築工事積算基準類の改定〜労務費等の見える化へ〜」(令和7年12月10日)別紙

ベース単価から見える「労務費の構成比」

ベース単価を積み上げることで、工種ごとの労務費比率が明確になります。国交省プレスリリース(R7年10月時点・東京単価)では以下のとおりです。

型枠(普通合板型枠 ラーメン構造 地上軸部 階高3.5〜4.0m程度)

労務費 64.0%
材料費 17.0%
その他 19.0%

鉄筋(RCラーメン構造 階高3.5〜4.0m程度 形状単純)

労務費 70.0%
その他(結束線・工場管理費含) 30.0%

ガス圧接(D25-D25)

労務費 63.0%
材料費 16.0%
その他 21.0%

出典:国土交通省プレスリリース(令和7年12月10日)別紙 R7年10月時点の単価(東京)を用いて算出

ベース単価の意義

「鉄筋工事の単価の70%は労務費」という事実が、積み上げで初めて明確になります。これが発注者にとって「公共工事設計労務単価水準の賃金が確保されている」ことの証明になります。

シフト単価とは何か

シフト単価は、ベース単価以外のすべての規格・仕様について設定される単価です。ゼロから積み上げるのではなく、ベース単価と市場取引調査結果の比率を使って算定します。

シフト単価の算定式

シフト単価 = ベース単価 ×(シフト単価の細目工種の取引調査結果に基づく単位施工当たりの価格 ÷ ベース単価の細目工種の取引調査結果に基づく単位施工当たりの価格)

シフト単価は「物価資料」の掲載価格によることを基本とする。

型枠の具体例:残り全部がシフト単価

型枠工事ではベース単価が1規格だけ。それ以外の規格はすべてシフト単価です。

種別 細目 摘要
シフト単価 普通合板型枠 基礎部
シフト単価 普通合板型枠 地下軸部 階高5.0m程度
シフト単価 普通合板型枠 ラーメン構造 地上軸部 階高2.8m程度
ベース単価 普通合板型枠 ラーメン構造 地上軸部 階高3.5〜4.0m程度(代表規格)
シフト単価 普通合板型枠 壁式構造 地上軸部 階高2.8m程度
シフト単価 打放し合板型枠 ラーメン構造 地上軸部 B種 階高3.5〜4.0m程度
シフト単価 打放し合板型枠 ラーメン構造 地上軸部 C種 階高3.5〜4.0m程度
シフト単価 打放し合板型枠 壁式構造 地上軸部 B種 階高2.8m程度
シフト単価 打放し合板型枠 壁式構造 地上軸部 C種 階高2.8m程度

シフト単価の労務費はどう把握するか

シフト単価は積み上げではないため、内訳がわからないように思えます。しかし国交省プレスリリースには次のとおり明記されています。

シフト単価の内訳の労務費相当額は、ベース単価の労務比率より算出可能

たとえば型枠のシフト単価であれば、ベース単価の労務費比率64.0%をそのシフト単価にも適用することで、労務費相当額を推計できます。シフト単価でも内訳の見える化が担保される仕組みです。

なぜ2層構造にするのか

ベース単価とシフト単価の2層構造は、積算担当者を困らせるために作られたものではありません。限られた調査データで市場実態を反映しながら、内訳の見える化を実現するための仕組みです。

  • 1
    歩掛り調査は時間と労力がかかる
    国交省プレスリリースには「歩掛り調査にはデータの収集・分析に時間と労力を要する課題があるため、代表的な規格・仕様を対象に実施」と明記されています。全規格でゼロから歩掛り調査を行うのは現実的ではありません。
  • 2
    代表規格だけ精密に調査する(=ベース単価)
    各工種で最も一般的な規格・仕様を1つ選び、専門工事業者等の協力を得て精密な歩掛り調査を実施。これがベース単価になります。
  • 3
    残りはベース単価を使って効率的に整備する(=シフト単価)
    代表規格以外は、元請・下請間の取引調査結果の比率を使ってベース単価を調整。歩掛り調査なしで多数の規格の単価を効率よく整備できます。
  • 4
    シフト単価でも労務費比率はベース単価から推計できる
    積み上げではないシフト単価でも、ベース単価の労務比率を適用することで労務費相当額の把握が可能。内訳の見える化が全規格にわたって担保されます。
2層構造のメリットまとめ
  • 全規格でゼロから歩掛り調査するコストを大幅に削減
  • 市場取引の実態をシフト単価に反映できる
  • ベース単価の労務比率を通じて、シフト単価でも内訳が推計可能
  • 物価資料への掲載による単価の透明性確保

3方式の比較表で整理する

結論(再掲)
  • 市場単価:完成品の1本値。内訳は見えない
  • ベース単価:代表規格の積み上げ単価。内訳が完全に把握できる
  • シフト単価:ベース単価×調査比率。労務費はベース単価の比率で推計できる
項目 市場単価 ベース単価 シフト単価
算定方法 取引調査のみ(込み) 複合単価方式で積み上げ ベース単価×取引調査比率
内訳の可視性 低い(内訳込み) 高い(歩掛り表で明示) 中(ベース単価の労務比率で推計)
1工種あたりの数 複数 1個だけ 複数(規格数だけ)
歩掛り調査 不要 実施(代表規格のみ) 不要(ベース単価を活用)
専門工事業者等の諸経費 単価に込み(別途計上しない) 歩掛り表内に計上 ベース単価に準じて推計
物価資料への掲載 掲載 参考掲載 基本掲載

福島県の積算担当者が押さえるポイント

令和8年改定は国交省では令和8年3月11日から適用されていますが、福島県では例年どおり約半年遅れの2026年10月15日から適用される見込みです。

確認事項 内容
現在の対象工種 鉄筋(ガス圧接含む)・型枠(令和7年12月〜)、電気設備の絶縁ケーブルEM-EEF(令和8年3月〜)
シフト単価の使い方 物価資料の掲載価格が基本。ベース単価から補正して算定することも可能
労務費比率の活用 シフト単価の労務費相当額はベース単価の労務比率(型枠64%、鉄筋70%等)で推計
福島県適用日 2026年10月15日(目安)。必ず発注機関の通知で最終確認

まとめ|ベース単価とシフト単価、覚えておくべき3点

この記事のポイント
  1. ベース単価は代表規格の積み上げ単価。1工種に1個だけ。労務費・材料費の内訳が完全に把握できる
  2. シフト単価はベース単価を取引調査比率で調整した単価。1工種に複数設定される
  3. シフト単価の労務費相当額はベース単価の労務比率(型枠64%・鉄筋70%・ガス圧接63%)で推計できる
  4. 2層構造にする理由は「歩掛り調査の効率化」。全規格をゼロから調査するコストを削減しながら内訳の見える化を実現する仕組み
  5. 現在の対象工種は鉄筋・型枠・絶縁ケーブルの3工種のみ。他の工種も順次拡大予定

ベース単価とシフト単価の仕組みを理解しておくことで、令和8年改定後の積算作業がスムーズになります。対象工種は今後さらに広がる見込みですので、今のうちに基本を押さえておきましょう!

もっと詳しく知りたい方はこちら(参考リンク)

本記事は国土交通省プレスリリース(令和7年12月10日・令和8年3月11日)および公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)をもとに作成しています。実際の適用日・基準内容は発注機関の最新通知で必ずご確認ください。

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