市場単価にも専門工事業者等の諸経費率を加算する?令和8年積算基準で解説
令和8年の積算基準で、専門工事業者等の諸経費の率を確認すると、「労務費」「材料費等」の区分が出てきます。市場単価を使う場合にも、この率を加算する必要があるのでしょうか。
この記事では、複合単価を作る場合と、市場単価を採用する場合の違いを整理します。すでに出来上がった単価への二重加算を、計算例で確認していきます。
国土交通省の公共建築工事標準単価積算基準・令和8年改定版に基づく説明です。個別案件の単価採用・補正は、発注者が指定する基準・運用に従います。
結論:市場単価に諸経費率を重ねて加算しません
市場単価には、専門工事業者の諸経費が含まれています。
その市場単価に、複合単価を作るときの専門工事業者等の諸経費率を重ねて加算すると、含まれている費用を再び加えることになります。
標準単価積算基準の総則では、市場単価を元請業者と下請の専門工事業者間の取引調査に基づく価格とし、その構成に専門工事業者の諸経費を含めています。国土交通省の改定説明資料にも、この点が示されています。
根拠:標準単価積算基準・第1編総則2(3)、令和8年3月11日改定資料・別紙の注記。
1.複合単価と市場単価では、単価の作り方が違う
複合単価は、歩掛りの所要量に材料単価・労務単価等を掛け、諸経費も考慮して組み立てます。市場単価は、取引調査に基づく施工1単位当たりの価格を採用する方式です。
| 確認する場面 | 諸経費の扱い |
|---|---|
| 材料・労務等から複合単価を作る | 歩掛りの区分に従い、諸経費を計算して単価に含める |
| 市場単価を採用する | 専門工事業者の諸経費が含まれた単価として扱う |
| 完成済みの複合単価を採用する | 構成を確認し、計上済みの諸経費を重ねて加えない |
「複合単価なら率を掛ける、市場単価なら掛けない」とだけ覚えると、完成済みの複合単価にも率を加えてしまうおそれがあります。今から単価を作るのか、出来上がった単価を使うのかまで確認しましょう。
2.複合単価を作る場合の計算例
専門工事業者等の諸経費の率は、労務費(労)が42~52%、材料費・消耗材料費等(労以外)が9~13%です。国土交通省の積算基準等資料では中間値を標準とし、地域の特殊性等を考慮して定めるとしています。
以下は、単価の作り方を説明するための仮定の例です。実際の工種の歩掛りや物価資料の価格ではありません。材料費等600円を「労以外」、労務費400円を「労」とし、中間値の11%・47%を使います。
| 費目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 材料費等 | 所要量から算定済みと仮定 | 600円 |
| 労務費 | 所要量から算定済みと仮定 | 400円 |
| 諸経費(労以外) | 600円×11% | 66円 |
| 諸経費(労) | 400円×47% | 188円 |
| 説明用の複合単価 | 1,254円 | |
この例では、材料費等と労務費を合わせた1,000円に、諸経費254円を加えて単価を作っています。1,000円全体に47%を掛ける計算ではありません。
実際には、歩掛り表の「労」「労以外」の区分や対象外となる費用の取扱いを確認します。また、上表は計算構造の説明であり、内訳書へ計上する単価の端数処理は適用基準によります。
根拠:改定説明資料・諸経費率と算定方法、積算基準等資料・第4編第1章「専門工事業者等の諸経費の率」。
3.市場単価を使う場合の計算例
次は別の説明例として、対象の規格・施工条件に合った市場単価が1,000円/m、数量が100mだったと仮定します。価格・数量ともに説明用で、前節の複合単価と同じ工種を比較するものではありません。
1,000円/m×100m=100,000円
この市場単価には専門工事業者の諸経費が含まれるため、その費用を追加するための計算は行いません。
ここで市場単価全体に47%を追加すると、次の金額になります。
不適切な計算例:1,000円×1.47×100m=147,000円
元の金額との差は47,000円です。これは、必要な規格・施工条件の補正ではなく、諸経費率を市場単価全体に重ねて加えてしまった場合の差です。
この計算には、諸経費を含む単価への二重加算と、労務費に対する率を単価全体へ掛けているという二つの問題があります。
4.完成済みの複合単価にも二重加算しません
第2節の例で作った1,254円は、すでに諸経費を含む複合単価です。この単価を採用するときに、もう一度11%や47%を加える処理はしません。
代価表を確認するときは、材料・労務等の小計なのか、諸経費まで含めた合計なのかを見てください。諸経費を計算する前の金額と、計算後の単価を取り違えないことが重要です。
単価の名称だけで判断するよりも、「どこまで計算済みか」を一つずつ確認する方が、二重加算の有無を確かめやすくなります。
5.市場単価の補正・共通費は分けて確認
市場単価の補正は、諸経費の追加とは別です
標準単価積算基準では、規格・仕様が記載された細目工種の摘要と一部異なる場合、類似の市場単価を適切に補正できるとしています。
そのため、「市場単価には諸経費率を重ねない」ことと、「市場単価にはどのような補正も行わない」ことは同じではありません。補正が必要な場合は、その条件に対応する基準の式や係数を確認します。
工事全体の共通費は、別に算定します
市場単価に含まれるのは専門工事業者の諸経費です。それを理由に、工事全体の共通仮設費・現場管理費・一般管理費等を省くことはできません。
市場単価を使った項目も、工事全体の費用構成に沿って整理し、共通費基準により算定を進めます。個別の対象額や除外項目は、適用する基準・運用で確認してください。
根拠:標準単価積算基準・第1編総則4(2)、公共建築工事共通費積算基準(令和8年改定)1〜4。
まとめ
単価を確認するときは、次の3点を押さえてください。
- 材料等から単価を組み立てる段階か、完成した単価を採用する段階か
- 専門工事業者等の諸経費が、すでに単価に含まれているか
- 追加しようとしている率が、諸経費率・条件補正・共通費のどれなのか
この順番で整理すると、必要な補正と、すでに含まれる経費の二重加算を区別できます。
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