令和8年の公共建築工事共通費積算基準の改定ポイントまとめ
令和8年3月に国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」が改定されました。実際に新旧対照表を見ても、どこが変わったのか分かりにくい、実務に影響する改定なのか知りたい、積算ソフトの設定変更が必要なのか確認したい、という方も多いと思います。
今回の改定では、一般管理費等率の統合が最大の変更点です。そのほか、建退共掛金の取扱い見直し、一般管理費の費目整理、環境安全費への安全用品の明記が行われました。この記事では、新旧対照表をもとに実務担当者が確認しておきたい改定ポイントを整理します。
目次
そもそも公共建築工事共通費積算基準とは
公共建築工事の積算では、材料費・労務費などの「直接工事費」に加えて、「共通費」を計上します。共通費は次の3つに区分されます。
| 区分 | 内容のイメージ | 算定の基礎 |
|---|---|---|
| 共通仮設費 | 仮囲い・現場事務所・安全管理など | 直接工事費(P)に対する比率 |
| 現場管理費 | 現場従業員の給料・保険料など | 純工事費(Np)に対する比率 |
| 一般管理費等 | 本店の管理費・付加利益など | 工事原価(Cp)に対する比率 |
「公共建築工事共通費積算基準」は、これらの算定ルールを定めた国土交通省の基準です。令和8年3月11日付(国営積第15号)で改定されました。
改定ポイント① 一般管理費等率が工種別から全工種共通に変更
今回の改定でもっとも実務に影響するのが、一般管理費等率の算定式の統合です。
改定前は建築工事・電気設備工事・機械(昇降機)設備工事でそれぞれ別々の算定式(別表15〜17の3本)が設けられていました。改定後は工種を問わず、すべて同じ1本の式で算定します。
改定前:工種別3本の算定式(別表15〜17)
| 対象工種 | 算定式(Gp) | 上限率 |
|---|---|---|
| 建築工事 | Gp=28.978-3.173×log₁₀(Cp) | 17.24%(500万円以下) |
| 電気設備工事 | Gp=29.102-3.340×log₁₀(Cp) | 17.49%(300万円以下) |
| 機械・昇降機設備工事 | Gp=27.283-3.049×log₁₀(Cp) | 16.68%(300万円以下) |
改定後:全工種統一の1本(別表15)
| 対象工種 | 算定式(Gp) | 上限率/下限率 |
|---|---|---|
| 建築・電気・機械・昇降機すべて | Gp=32.597-3.591×log₁₀(Cp) | 上限20.11%(300万円以下) 下限9.34%(30億円超) |
ロジックのポイント
Gpは工事原価(Cp)が大きくなるほど低くなる仕組みです。小規模工事ほど率が高く、大規模工事ほど率が低い——この傾向は改定前後で変わりません。改定で変わったのは、工種による差をなくして1本化した点です。複合工事(建築+電気設備など)でも、一般管理費等率を1本の式で統一して算定します。
改定ポイント② 建退共掛金が独立項目に
現場管理費の費目(表-2)で、建設業退職金共済の掛金の位置が変わりました。
改定前 「建設業退職金共済制度に基づく証紙購入代金」が法定福利費の内訳に含まれていた
改定後 「建設業退職金共済 契約に係る掛金」として独立した費目に分離
算定比率への影響はなく、費目の整理・明確化が目的の変更です。
改定ポイント③ 一般管理費の費目整理
改定前 「維持修繕費」「試験研究償却費」が費目として存在
改定後 「修繕維持費」に名称変更(語順の入れ替え)。「試験研究償却費」は削除
算定比率への影響はありません。
改定ポイント④ 環境安全費にフルハーネスを明記
共通仮設費率に含む内容(表-5・建築工事、表-6・電気設備・機械設備・昇降機設備工事)の環境安全費欄に、安全用品の文言が追加されました。
改定前 安全標識・消火設備等の施設の設置、隣接物等の養生及び補償復旧に要する費用(安全用品の記載なし)
改定後 「安全用品等(墜落制止用器具(フルハーネス型)を含む)」の文言を明示
算定比率への影響はありません。
実務への影響はあるのか
改定ポイント②〜④(建退共掛金の独立・一般管理費の費目整理・環境安全費の文言追加)については、算定率そのものに大きな影響はありません。
一方で、一般管理費等率は工種別の算定式が廃止され、全工種共通の算定式へ変更されました。積算結果に影響する可能性があるため、積算ソフトの設定状況を確認しておくことをおすすめします。
確認事項:使用している積算ソフトが令和8年改定の一般管理費等率(全工種統一、別表15)に対応しているか、担当窓口またはサポートデスクにご確認ください。
まとめ
令和8年改定・共通費積算基準の変更点まとめ
① 一般管理費等率:工種別3本→全工種統一1本に変更(算定式・上限率が変更。積算ソフトの設定確認が必要)
② 建退共掛金:法定福利費から独立した費目に分離(算定比率への影響なし)
③ 一般管理費費目:「修繕維持費」に名称変更、「試験研究償却費」を削除(算定比率への影響なし)
④ 環境安全費:フルハーネス型安全用品の文言を明示(算定比率への影響なし)
算定式のロジック自体は「工事原価が大きくなるほど率が低くなる」という従来の構造を引き継いでいます。今回の統合により、建築・電気設備・機械設備の工種をまたぐ複合工事でも、一般管理費等率の考え方がシンプルになりました。
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