労務費に関する基準とは?

結論
令和6年の建設業法改正(新・担い手3法)により、建設業法第34条が改正され、中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告できることになりました。これを受けて中央建設業審議会は令和7年12月2日に本基準を正式に勧告し、令和7年12月12日に全面施行されています。目的は技能者への適正な賃金の行き渡りと、労務費の行き過ぎたダンピング防止です。注文者・受注者の双方に、この基準への配慮が求められます。

労務費に関する基準の法的な位置づけ

国土交通省の公表資料によれば、「労務費に関する基準」は建設業法第34条に基づき、中央建設業審議会が作成・勧告するものです。改正法の成立は令和6年6月ですが、実際の基準そのものは令和7年12月2日、中央建設業審議会から公共発注者・建設業団体・民間発注者団体宛てに勧告として発出されました。本記事の「見積り期間の法定義務」「下請契約締結の禁止事項」で扱った建設業法第20条第3項・第4項、第19条の3とは異なる、新設の枠組みです。

基準がつくられた目的

国土交通省の資料では、本基準の目的を「個々の技能者に、その経験・技能に応じた適正賃金が支払われるようにするため」としています。公共工事・民間工事を問わず、発注者から技能者を雇用する建設業者に至るまでの全ての取引段階で適正な労務費(賃金の原資)を確保し、行き過ぎたダンピングを防ぐことがねらいです。

ポイント
標準労務費は「公共工事設計労務単価(円/人日、8時間当たり)×歩掛(人日/単位施工量)×施工量」で算定されます。労務単価は工事施工地の都道府県に適用される公共工事設計労務単価を基準とし、これを下回る水準を設定しないことが原則です。歩掛は国の直轄工事で用いる標準的な歩掛を用い、個別契約の施工条件に応じて補正します。

注文者・受注者に求められる配慮義務

基準本文では、受注者について「本基準を踏まえ、個別契約に即して適正な労務費を自社の歩掛を基に算出し、それを明示した」見積書を作成することが求められています。一方、注文者については、受注者が提示した労務費の内訳明示見積りを「尊重」すること、また注文者が価格を指定して契約する場合であっても、本基準を活用して労務費を内訳明示することが求められています。

注意
「労務費に関する基準」は、元請・下請間や受発注者間の取引を適正化するための基準であり、公共工事の予定価格そのものを算定する基準ではありません。積算(発注者側の予定価格の再現・推定)とは目的が異なる制度である点に注意してください。

公表時期と対象

基準値は、標準的な作業内容や施工条件が特定でき、適用職種が明確といった一定の要件を満たす職種分野について、国土交通省が職種分野別・都道府県別の数値を定め、労務費ポータルサイト(roumuhi.mlit.go.jp)で公表しています。あわせて、労務費の確保に伴い、法定福利費の事業主負担分・安全衛生経費・建設業退職金共済制度の掛金にしわ寄せが生じないよう、これらは労務費とは別に内訳明示して計上する必要があるとされています。

一次資料で確認できなかった点
基準値の設定対象となる具体的な職種数・職種名の一覧は、公開時期により変動する可能性があるため、本記事では確定した数値として記載していません。最新の対象職種と基準値は、必ず労務費ポータルサイトの公表資料で確認してください。

公共工事の入札に参加する事業者にとって、この基準は自社が発注する下請契約の労務費見積りの妥当性を判断する材料になります。次回以降は、この基準が実際の見積書・契約書にどう反映されるべきかを掘り下げていきます。

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