現場代理人の常駐義務・兼任要件とは?
1〜3億円クラスの公共工事(建築・電気・機械設備)の入札を検討する際、金抜設計書から予定価格を推定する積算作業と並んで、必ず目を通しておきたいのが「配置技術者の要件」です。中でも現場代理人の「常駐義務」と「兼任要件」は、契約約款に明記されている基本ルールでありながら、見積り(自社の施工費用計算)の実務にはあまり出てこないため、初めて公共工事に挑む担当者がつまずきやすいポイントです。本記事では福島県の一次資料に基づき、常駐義務の内容と、複数現場を兼任できる条件を整理します。
現場代理人の「常駐義務」とは
福島県工事請負契約約款第10条に定められる現場代理人は、発注者に対する受注者側の契約上の代理人であり、資格要件は課されていません。この現場代理人には、工事現場への「常駐義務」があります。福島県の公式Q&Aでは、常駐義務を「作業期間中(土日等の休工日を除く)、相当の理由がある場合を除き、常に工事現場に滞在していること」と説明しています。つまり原則として、工事期間中は他の現場と掛け持ちせず、その現場に張り付いて工事の運営・取締りに当たることが求められます。
常駐が不要となる期間
ただし、工事期間中すべてで常駐が必要というわけではありません。福島県のQ&Aでは、次の期間は常駐義務の対象外とされています。
- 工事に着手していない準備期間(起工測量、資機材搬入等を含む)
- 発注者から工事全部について一時中止命令が出されている期間
- 工場製作のみが行われている期間
- 完成届提出後、完成検査の待機中となっている期間
現場代理人の常駐義務は、建設業法第26条の主任技術者・監理技術者の専任義務とは別の制度です。両者は兼任できますが、本記事で扱う「常駐義務」「兼任要件」はあくまで契約約款上の現場代理人に関するルールであることに注意してください。
複数現場を兼任できる3パターン(福島県)
福島県は令和7年1月17日付通知「工事における現場代理人の常駐義務の緩和について」で、1人の現場代理人が複数の工事現場を兼任できる条件を、次の3パターンに整理しています。いずれも兼任可能な件数は原則2件です。
| パターン | 距離・体制要件 | 金額要件 | 兼任件数 |
|---|---|---|---|
| ①近接現場の一体管理 (建設業法施行令第27条第2項) |
工作物に一体性・連続性がある工事で、現場間隔が概ね10km程度 | 明記なし(専任の主任技術者配置を要する工事を含んでも対象) | 原則2件 (発注機関が同一かつ現場間の最短経路が概ね100m以内なら2件超も可) |
| ②ICT活用型 (建設業法第26条第3項) |
一日で巡回可能かつ移動時間が概ね2時間以内。下請次数3次以内。映像・音声による通信体制の確保が必要 | 請負代金1億円未満 (建築一式工事は2億円未満) |
2件 |
| ③発注者の個別承認 | 先行工事と同一土木事務所管内(隣接も可) | 契約金額(予定価格)4,500万円未満 (建築一式工事は9,000万円未満) |
2件 |
1〜3億円規模の工事で確認しておきたいポイント
入札を検討する工事が請負金額1〜3億円クラスの場合、パターン②・③は金額要件の上限(1億円・2億円、4,500万円・9,000万円)を超えてしまうケースが多く、単純には適用できません。一方でパターン①には金額の上限が明記されておらず、専任の主任技術者配置が必要な規模の工事であっても、現場間が10km程度で工作物に一体性・連続性が認められれば、原則2件までの兼任対象になり得ます。自社の配置予定体制がどのパターンに該当するか、入札前に整理しておくことが重要です。
兼任の承認を得るには、福島県の通知が定める付与条件を満たす必要があります。具体的には「現場代理人が不在となる工事現場には、施工に関する事項を処理できる責任者を必ず配置すること」「現場代理人は必ずいずれかの工事現場に駐在すること」「1日に1回以上は当該工事現場に駐在し、現場管理に当たること」などが定められています。
積算の視点から見た位置づけ
積算とは、発注者側が積算基準に沿って算出する予定価格を、金抜設計書をもとに再現・推定する作業であり、自社の施工費用を計算する見積りとは目的が異なります。現場代理人の常駐義務・兼任要件そのものは、金抜設計書の金額に直接表れるものではありません。ただし、入札参加資格の確認や施工体制の妥当性を判断する場面では必ず関係してくる制度であるため、積算を学ぶ前提知識として押さえておく必要があります。
福島県工事請負契約約款第10条により、現場代理人には原則として工事現場への常駐義務がある。ただし①近接現場の一体管理、②ICT活用(建設業法第26条第3項)、③発注者の個別承認という3パターンの緩和措置があり、条件を満たせば原則2件まで複数現場の兼任が可能。1〜3億円規模の工事では金額要件のあるパターン②・③の対象外となりやすく、金額の上限がないパターン①が現実的な選択肢になりやすい点を押さえておきたい。
