執務並行改修の判定単位はフロアか建物か?同一建物内の改修工事を解説

同一建物内でフロアごとに執務状態が異なる改修工事の判定単位|フロア単位の執務並行改修
SEKISAN-PRO|公共建築工事積算コラム

同一建物内でフロアごとに執務状態が異なる改修工事の判定単位
|フロア単位の執務並行改修

2026年9月7日 sekisanproorg1234

積算担当の皆様、お疲れ様です!SEKISAN-PROです。「改修対象のフロアはもう無人なのに、他のフロアには職員が残っている」――庁舎や学校の改修ではよくある状況ですよね。この場合、判定は改修対象フロア基準で見ればいいのか、建物全体で見ればいいのか。今回はこの「判定単位」の疑問に絞って整理します。

結論

  • 判定単位は「フロア」ではなく「建物(棟)全体」。改修対象フロアが無人でも、同じ建物の別フロアに執務者がいる状態であれば、その工事は執務並行改修に分類される
  • 「全館無人改修」の「全館」とは、改修する建物の全体を指す言葉であり、改修対象範囲(フロア・区画)の広さを指す言葉ではない
  • 改修対象フロア単体を切り出して「ここは無人だから全館無人改修」と扱うことはできない
  • 執務並行改修に分類されたあとの割増し・改修補正率の適用有無は、工種ごとの表A-1・表E-1・表M-1の判定次第。分類と金額計算は別の話

おさらい:全館無人改修・執務並行改修の判定基準

令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」第1編9(1)では、改修工事の執務状態を次の2つに区分しています。

積算基準 原文:

全館無人改修――「仮庁舎等が準備されている等、改修する建物全館が無人(執務者がいない)の状態で行う改修工事をいう。」

執務並行改修――「建物に執務者がいる状態で行う改修工事をいい、施工場所と執務中の場所が区画されている状態の工事も含まれる。」

ここで注目したいのは、全館無人改修の要件が「改修する建物全館」が無人であることだという点です。改修対象の範囲(部屋・フロア)が無人かどうかではなく、建物そのものが丸ごと無人かどうかで区分されています。

「全館」は建物全体を指すのか、改修対象フロアを指すのか

結論から言えば、「全館」は改修する建物そのものの全体を指します。改修対象フロアの広さ・範囲を表す言葉ではありません。

この点を混同しやすいのは、改修工事にはもう一つ「部位・方法」による区分(外部全面・外部部分・内部全面・内部部分)があるためです。こちらは改修範囲の広さ・点在の有無を表す軸で、「全面」「部分」という言葉が出てきます。

「全」「部分」が指すもの判定単位
執務状態(全館無人/執務並行)建物内に執務者がいるかどうか建物(棟)単位
部位・方法(全面/部分)改修する範囲の広さ・点在の有無改修対象部位・フロア単位

「内部部分改修だから、対象フロアだけで判定してよい」という発想は、この2つの軸を混同した誤りです。部位・方法の軸は改修範囲の話、執務状態の軸は建物全体の人の有無の話。別々の軸として切り分けて考える必要があります。

フロア・区画ごとに執務状態が異なる場合の考え方

具体例で確認します。3階建ての庁舎で、2階の内装改修を行うケースを考えてみましょう。

フロア執務状態
1階執務継続中
2階(改修対象)仮移転済み・無人
3階執務継続中

この場合、改修対象の2階は無人であっても、建物全体で見れば1階・3階に執務者がいます。積算基準の要件は「改修する建物全館」が無人であることなので、この工事は執務並行改修に分類されます。

逆に、1階・2階・3階すべてが仮庁舎へ移転済みで建物全体が無人であれば、初めて全館無人改修に該当します。判定の起点は「改修対象フロアの状態」ではなく、「建物全体の執務状態」であることを押さえておいてください。

実務上の注意

「改修対象フロアだけ見れば無人だから、このフロアの工事は全館無人改修の単価で積算した」という処理は、積算基準の要件を満たしません。同一建物内に執務者が残っている限り、改修対象フロアの工事も執務並行改修として扱う必要があります。

上下階・隣接フロアへの配慮はどう扱うか

執務並行改修に分類されたあとの実務は、これまでの記事で解説してきた工種別の割増し判定と同じ流れです。改修対象フロア自体には執務者がいなくても、上下階・隣接フロアに執務者がいることで、振動・騒音への配慮や施工時間の制約が生じる場合があります。

この場合も、割増し・改修補正率が実際に適用されるかどうかは、あくまで表A-1(建築)・表E-1(電気)・表M-1(機械)の工種別判定によります。「上下階に執務者がいるから、この工種は特別に割増しする」という個別ルールが積算基準にあるわけではなく、執務並行改修という分類のもとで通常どおり工種表を確認する、という手順になります。

一方で、防音対策や施工時間の制限など、配慮の具体的な中身は割増し率の話ではなく、設計図書の施工条件明示で個別に定められるべき事項です。上下階の状況を踏まえた施工条件が明示されているかどうかを確認しましょう。

設計図書での区画・工程明示の確認ポイント

フロアごとに執務状態が異なる工事を積算する際は、次の点が設計図書に明示されているかを確認してください。

確認項目内容
各フロアの執務状態改修対象フロア・非対象フロアそれぞれの執務者の有無
移転スケジュール仮移転の時期、段階的改修の場合は各フロアの移転完了予定日
フロアごとの施工順序どのフロアから着手し、どの順で進めるか
上下階・隣接区画への配慮事項防音・振動対策、施工可能時間帯の制約など

これらが曖昧なまま積算を進めると、後工程で判定の前提条件について発注者との間で認識の齟齬が生じる原因になります。判断に迷う点は積算根拠資料に確認の経緯を残しておきましょう。

福島県の積算担当者が注意すべきポイント

令和8年改定は国交省では2026年3月11日から適用されていますが、福島県では例年どおり約半年遅れの2026年10月15日から適用される見込みです。

確認事項内容
適用開始日2026年10月15日(目安)。発注機関の通知で最終確認
それまでの取扱い原則として令和7年改定版の基準で判定・積算
判定単位の考え方自体「全館」が建物単位を指すという判定の枠組みは、旧基準・新基準で大きな変更はないとみられる

まとめ

  • 執務状態による判定(全館無人改修・執務並行改修)は建物(棟)単位で行う。フロア単位で切り出すことはできない
  • 改修対象フロアが無人でも、同じ建物の他フロアに執務者がいれば執務並行改修に分類される
  • 「全館」(執務状態の軸)と「全面・部分」(部位・方法の軸)は別の軸。混同しないこと
  • 上下階・隣接フロアへの配慮が必要な場合も、割増し・改修補正率の適用有無は工種ごとの表A-1・表E-1・表M-1で確認する
  • 福島県での令和8年改定適用は2026年10月15日が目安。判定単位の考え方自体に大きな変更は見込まれない

フロアごとの状況を見て個別に判断したくなりますが、まず確認すべきは「建物全体として執務者がいる状態かどうか」。ここさえ押さえれば、判定で迷うことはなくなります。

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