福島市の建築・電気・設備工事の落札率はなぜ92%に集中しないのか|157件の入札結果を分析【保存版】
福島県公共営繕積算|落札率データ分析
福島市の建築・設備工事の落札率はなぜ92%に集中しないのか
令和7年4月〜令和8年7月に公表された福島市発注の入札結果(建築・電気・機械設備工事、解体・除却工事を除く)157件を集計し、市の公式要領と突き合わせて検証しました。
積算担当の方
福島市案件の金入設計書を作る際の落札率の目安を知りたい方に。
施工管理・営業担当の方
入札に参加する前に、福島市の最低制限価格制度の仕組みを整理しておきたい方に。
他自治体と比較したい方
福島県や近隣市町村との入札制度の違いを知りたい方に。
集計対象と方法
福島市が公表している「入札結果(閲覧用)」を、令和7年4月分から令和8年7月分まで確認し、工種が建築・電気・機械設備のいずれかに該当する案件を抽出しました。土木・造園・下水道・河川・道路整備等は対象外です。
さらに、解体工事・除却工事は他の工種と価格の性質が異なるため、今回の集計からは除外しています。落札額(契約金額)が確定している案件は157件でした。
実際の落札率分布
157件の落札率は、平均95.27%・中央値95.82%でした。最も低い案件で87.98%、最も高い案件は100.00%です。分布を区分別に見ると、次のようになりました。
| 落札率 | 件数 |
|---|---|
| 87〜90% | 15件 |
| 90〜91% | 15件 |
| 91〜92% | 15件 |
| 92〜93% | 11件 |
| 93〜95% | 12件 |
| 95〜98% | 33件 |
| 98〜100%未満 | 51件 |
| 100% | 5件 |
「92%±1ポイント」に収まっているのは157件中26件(16.6%)にとどまり、92%未満の案件が45件(28.7%)ある一方、98%以上も56件(35.7%)と、低い側・高い側の両方に幅広く散らばる分布になっています。
この157件には、制度が異なる案件が混在しています。通常の最低制限価格が適用される案件と、5,000万円以上で低入札価格調査が適用される案件を分けて見ると、次のようになります。
| 区分 | 件数 | 平均 | 中央値 | 92%未満の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 通常案件(最低制限価格) | 96件 | 94.56% | 94.51% | 35.4% |
| 低入札価格調査案件 | 37件 | 95.39% | 97.18% | 24.3% |
通常案件だけに絞っても、92%未満が3割超(35.4%)を占め、92%±1ポイントに収まるのは22.9%にとどまります。制度の違いを取り除いても、92%付近への集中は見られませんでした。
なぜ92%に集中しないのか
他の都道府県・市区町村では、最低制限価格を「中央公契連モデル式×独自係数」のような数式で機械的に算出しているケースがあります。この方式では、工事価格が一定規模より小さい場合、計算結果が上限値(多くは92%)に張り付きやすいという性質があり、結果的に落札率が92%付近に集中しやすくなります。
一方、福島市の「最低制限価格事務取扱要領」第3条を見ると、算定方法がまったく異なります。
つまり福島市は、数式で自動的に値を弾き出す方式ではなく、75%〜92%という幅の中のどこに設定するかを、案件ごとに発注課が個別に判断する制度です。この場合、値が上限(92%)に自然と寄っていく力学は働きにくいため、他自治体のように落札率が92%付近へ集中しにくい要因の一つになっていると考えられます。
実際、今回集計した通常案件(低入札価格調査等の対象外)96件を予定価格帯別に見ても、500万円未満・500万〜2,000万円・2,000万〜5,000万円のいずれの価格帯でも、92%未満の案件が3割前後を占めており、価格帯を問わず一定の割合で低めの落札率が出ています。
5,000万円以上は別ルール(低入札価格調査)
福島市には、最低制限価格制度とは別に「低入札価格調査制度」があります。「福島市低入札価格調査実施要領」第3条により、この制度は設計金額5,000万円以上の工事に適用されます。
今回の集計でPDF上に「低入札価格調査あり」と明記されていた42件を確認したところ、全件が予定価格5,000万円以上の案件でした。要領の条文どおりの運用がされていることが、実データからも確認できました。
低入札価格調査の仕組み(要領より)
- 調査基準価格(非公表・案件ごとに75〜92%の範囲で設定)を下回ると、即失格ではなく調査対象になる
- 調査の結果「契約内容通りに履行できないおそれがある」と判断されれば、最安値でも落札できない
- 調査基準価格以下で落札した場合、契約保証金が10分の1以上から10分の3以上に、前払金が10分の4以内から10分の2以内に変更される特約が付く
最低制限価格そのものは公表されない
今回確認した「入札結果(閲覧用)」PDFには、予定価格・契約金額(落札額)・各入札者の入札額は記載されていましたが、最低制限価格そのものの金額は一件も記載されていませんでした。制度が適用されていること自体は入札参加者に事前周知されますが(要領第7条)、具体的な金額は入札前・入札後を通じて公表されない運用です。
そのため、入札参加者は「どこまで下げれば失格になるか」を正確には把握できないまま入札することになります。これが、単純な安値競争を抑止する仕組みとして機能していると考えられます。
この記事のポイント
- 福島市の落札率は92%集中ではなく87〜100%に広く分布
- 最低制限価格は75〜92%の範囲で発注課が案件ごとに設定
- 5,000万円以上は低入札価格調査の対象(要領どおりの運用を確認)
- 最低制限価格の実額はPDFに記載されず非公表
まとめ
福島市の建築・電気・機械設備工事の落札率が92%に集中しないのは、最低制限価格を数式で機械的に算出する方式ではなく、75%〜92%の範囲内で発注課が案件ごとに判断する裁量型の制度であることが大きく影響していると考えられます。実際、通常案件だけに絞っても92%付近への集中は見られませんでした。5,000万円以上の案件については低入札価格調査制度が適用され、実データもその閾値どおりに運用されていることが確認できました。
出典:福島市「入札結果(閲覧用)」(令和7年4月〜令和8年7月公表分)、福島市最低制限価格事務取扱要領、福島市低入札価格調査実施要領

