猛暑による労務費の増加費用の求め方(国営積第24号:最終改正:令和8年9月1日)

ご注意

本記事で解説している内容は、国土交通省営繕部の「営繕工事における猛暑による作業中断等に伴う労務費の増加費用の積算方法(試行)」に基づくものです。

福島県営繕工事では熱中症対策に関する取扱いが異なるため、適用にあたっては福島県の基準をご確認ください。誤って混同しないようご注意ください。
福島県:建設工事における熱中症防止対策の徹底について

積算実務・営繕工事

猛暑による労務費の増加費用の求め方

令和8年3月31日付通知(国営積第24号、最終改正:令和8年9月1日)をもとに、計算例で解説します。

こんな人向けの記事です

  • 公共営繕工事の積算・見積りを担当している方
  • 「猛暑による労務費の増加費用」という項目を初めて見た方
  • 計算式の意味を、具体的な数字で理解したい方

1算定式(求め方)

猛暑による労務費の増加費用は、次の式で求めます。

猛暑による労務費の増加費用 =
 作業不能日数 ÷(工期T-作業不能日数)× 工事費のうち労務費相当額 ×(1+専門工事業者等の諸経費の率(労))

結論

猛暑による労務費の増加費用は「作業不能日数」「工期」「労務費相当額」「専門工事業者等の諸経費の率(労)」の4つの数値から算定し、直接工事費に加算します。当初積算で計上する場合もありますが、実務上は、精算変更時の取扱いが重要になります。

ポイントは、比率の分母を「工期そのもの」ではなく「工期-作業不能日数(実際に稼働できた日数)」にしている点です。休んだ日数分を、実働日数に対する割合として労務費に上乗せする、という考え方になります。

根拠は、国土交通省大臣官房官庁営繕部計画課が発出した「営繕工事における猛暑による作業中断等に伴う労務費の増加費用の積算方法の試行について」(国営積第24号、令和8年3月31日付、最終改正:令和8年9月1日付)です。この試行は、令和8年4月1日以降に入札手続きを開始する工事に適用されます。

労務費相当額の求め方

工事費のうち労務費相当額を実額で把握できない場合は、次の代替式を用いることができます。

労務費相当額 = 労務費相当額算定用の直接工事費 ×(1+K÷100)× 標準的な労務費構成割合

Kは公共建築工事共通費積算基準による共通費率です。標準的な労務費構成割合は、用途ごとに次のとおり定められています(出典:「労務費ダンピングを防止するための公共発注者向けガイドライン」令和7年12月、国土交通省不動産・建設経済局作成)。

用途標準的な労務費構成割合
事務所8.59%
倉庫9.36%
学校の校舎12.25%
その他9.12%

2計算例で確認する

以下は、式の意味を理解するための仮定の数値による計算例です。実際の工事に当てはめる際は、個別の条件で計算してください。

項目仮定値
直接工事費8,000万円
K(共通費率)25%
用途その他(9.12%)
工期T300日(10ヶ月)
作業不能日数15日
専門工事業者等の諸経費の率(労)47%

通知本文では「専門工事業者等の諸経費の率(労)」とだけ定められており、率そのものは明記されていません。本記事の計算例では、公共建築工事標準単価積算基準における労務費(労)の率(42〜52%)の中間値である47%を、あくまで説明用の仮定値として使用します。実際の工事で47%が固定的に使われるわけではない点にご注意ください。

ステップ1:労務費相当額を出す

8,000万円 ×(1+0.25)× 9.12% = 912万円

ステップ2:作業不能日数の割合を出す

15日 ÷(300日-15日)= 15日 ÷ 285日 ≒ 5.26%

ステップ3:ステップ1×ステップ2

912万円 × 5.26% ≒ 48万円

ステップ4:諸経費率(労)を乗せる

48万円 ×(1+0.47)≒ 70.6万円

計算結果

この条件での猛暑による労務費の増加費用は、約70.6万円です。直接工事費8,000万円に共通費25%を加えた工事価格1億円に対し、約0.7%相当が加算される計算になります。

工期が短いほど比率は大きくなる

同じ作業不能日数15日でも、工期を150日にすると割合は15日÷135日≒11.1%となり、増加費用は912万円×11.1%×1.47≒149.0万円まで上がります。工期に対する作業不能日数の割合が、結果を大きく左右します。

3作業不能日数が実績で変わった場合の再計算

当初(発注時)に見込んだ作業不能日数は、過去5年分のWBGT値データの平均です。実際の工期中に発生した作業不能日数が、当初の見込みと著しく乖離した場合は、設計図書を変更したうえで、同じ算定式に実績の日数を当てはめて再計算します。この再計算は、精算変更時に行うのが基本です。

結論

「差分だけを追加計算する」のではなく、実績の作業不能日数で式全体を計算し直し、その結果と当初計上額との差額を、精算変更時に調整します(実績が当初を上回れば増額、下回れば減額となります)。

たとえば、先ほどの計算例(直接工事費8,000万円、K25%、その他9.12%、工期300日、諸経費率(労)47%)で、当初は作業不能日数を15日と見込んでいたところ、実績のWBGT31以上の日数を集計したら20日だった、というケースで確認します。

ステップ1:当初計上額を確認する

作業不能日数15日のときの増加費用は、912万円×5.26%×1.47≒70.6万円(すでに計算済み)

ステップ2:実績の作業不能日数の割合を出す

20日 ÷(300日-20日)= 20日 ÷ 280日 ≒ 7.14%

ステップ3:労務費相当額に乗じる

912万円 × 7.14% ≒ 65.1万円

ステップ4:諸経費率(労)を乗せて、実績ベースの増加費用を出す

65.1万円 ×(1+0.47)≒ 95.8万円

精算変更で調整する額

実績ベースの増加費用95.8万円-当初計上額70.6万円=約25.2万円となるため、本事例では精算変更時に約25.2万円を増額計上します。

工期そのものが変更された場合(Tが300日から変わった場合)や、労務費相当額に変更が生じた場合も、考え方は同じです。変更後の工期T・作業不能日数・労務費相当額を、そのつど式全体に当てはめて計算し直します。

4実務で注意したいポイント

最後に、実務で見落としやすい点を整理します。

対象は国の直轄営繕工事です

国営積第24号は、国土交通省大臣官房官庁営繕部が発注する営繕工事を対象とした試行です。福島県が発注する建築関係工事に、同様の労務費増加費用の算定規定が導入されているかどうかは、本記事作成時点で一次資料上確認できていません。福島県発注工事の積算にあたっては、県の建築関係工事積算基準など、発注者の最新の基準をご確認ください。

作業不能日数の根拠

作業不能日数は、環境省が観測・公表するWBGT値(気温、湿度、日射・輻射を考慮した暑さ指数)が31以上となった時間を日数換算したものです。発注時に見込む日数は、過去5年分のWBGT値データから算定し、5年分を平均して設計図書に明示します。

まとめ

  • 猛暑による労務費の増加費用は、作業不能日数・工期・労務費相当額・諸経費率(労)から算定する
  • 比率の分母は「工期」ではなく「工期-作業不能日数」(実働日数)である
  • 作業不能日数の実績が当初見込みと乖離した場合は、実績の日数で式全体を再計算し、当初計上額との差額を精算変更時に調整する(増額・減額のいずれもある)


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