概算工事費とは?
概算工事費と予定価格は別のもの
公共工事の入札に参加する際、多くの方が最初に接するのは実施設計完了後に作成される金抜設計書や、入札時に発注者が決定する予定価格です。しかし、その手前の基本設計段階では、これらとは性格の異なる「概算工事費」という金額がすでに算定されています。両者を混同すると、入札戦略の前提がずれてしまいます。
概算工事費は、基本設計段階で設計者が類似施設の実績単価などをもとに算定する暫定的な金額で、国土交通省の「官庁施設の設計段階におけるコスト管理ガイドライン」に基づき運用されます。一方、予定価格のもとになる工事費は、実施設計完了後に「公共建築工事積算基準」(数量基準・単価基準・共通費基準からなる営繕積算方式)に基づいて積算された金額です。同じ「工事費の見積り」でも、根拠となる基準も算定段階もまったく異なります。
どの段階で、誰が算定するのか
国土交通省大臣官房官庁営繕部が定める「官庁施設の設計段階におけるコスト管理ガイドライン」(平成23年6月20日 国営整第57号・国営設第33号、最終改定 平成27年3月31日 国営整第263号・国営設第138号)は、官庁施設の新築・増築の設計に適用され、次のように段階を分けています。
- 基本設計着手段階:受注者(設計者)が保有する類似施設の実績や統計を基に概算工事費を算出する
- 基本設計審査段階:設計情報を反映した概算工事費を発注者に提出し、審査を受ける
- 実施設計審査段階:基本設計審査段階から変更となった部分を見直し、反映する
同ガイドラインは、実施設計の段階や積算した結果として予定工事費を超過することが明らかになった場合、設計の手戻りによる多大な労力と期間が必要になり得ると述べています。この記述からも、概算工事費は設計途中のコスト管理のための金額であり、実施設計後に「積算」した結果としての予定工事費とは別の工程で扱われていることが分かります。
概算工事費の算定方法
国土交通省官庁営繕部整備課・設備環境課「概算工事費算出にあたっての留意事項」(平成26年改定)は、算定方法として次を示しています。
- 面積単価法:延べ床面積あたりの実績単価の平均値や数量の実績値を活用する方法
- 数量積上法:概算数量を算出し、刊行物等の単価を乗じる方法
- 見積り収集:見積りを収集することを基本とする項目もある
いずれも、実施設計後に確定した数量へ標準歩掛と単価基準を当てはめる積算とは異なり、過去の類似実績や統計値を用いる概算的な手法である点が特徴です。
予定価格・金抜設計書との違い
予定価格のもとになる工事費は、実施設計で確定した設計図書をもとに、公共建築工事積算基準等をパッケージ化した営繕積算方式で積算されます。この方式は数量基準(数量の計測・計算方法)、単価基準(積算単価の種別・算定方法・標準歩掛り)、共通費基準(共通仮設費・現場管理費・一般管理費等の算定方法)で構成され、設計図書の確認から予定価格内訳書の作成へと進みます。入札関係資料として公表される金抜設計書は、この実施設計段階で数量が確定した設計書から金額を抜いたものであり、概算工事費の段階ではまだ作成されません。
つまり、概算工事費(基本設計段階)→実施設計→積算基準による積算・金抜設計書の公表→予定価格の決定、という順に精度と拘束力が積み上がっていきます。予定価格の上限拘束性や事前公表の扱いは別記事で整理した通りです。
今回参照した国土交通省の資料は「基本設計着手段階」からの概算工事費算出を明記していますが、「基本計画」段階における概算金額の算定根拠や名称、また概算工事費と予定価格の間で許容される乖離率・精度の数値基準については、確認できませんでした。
入札参加者として押さえておくべきこと
民間企業が入札戦略を立てる際に参照できるのは、公表された金抜設計書です。基本設計段階の概算工事費やその根拠を示すコスト管理表は、発注者と設計者の間で設計審査に用いるために運用される書類として位置付けられており、入札関係資料として公表される金抜設計書とは役割が異なります。積算、すなわち予定価格の再現・推定作業は、金抜設計書が公表された段階から始まる、という整理になります。
SEKISAN-PRO|福島県公共営繕積算情報プラットフォーム
