デジタル写真管理情報基準とは?

はじめに

公共工事の入札に参加しようとすると、「工事写真」という言葉に必ず出会います。しゅん工図書の様式一覧を見ると、工事写真は第94号様式として位置づけられていますが、様式番号だけでは「何を、いつ、どう撮ればよいのか」は分かりません。撮影が足りずに手直しを求められたり、黒板の記載が不十分で受理されなかったりすれば、工期にも影響します。

この撮影・整理のルールを定めているのが、国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」と、福島県が独自に定める写真管理基準です。両者は名前が似ていますが、定めている内容も策定主体も異なります。本稿では国土交通省と福島県の公式資料に基づき、この二つの基準の位置づけと具体的な内容を整理します。しゅん工図書全体の様式構成については別稿(第142回「しゅん工図書とは?」)で扱っているため、本稿では工事写真そのものの撮影・管理基準に絞って解説します。

デジタル写真管理情報基準とは?

結論:「デジタル写真管理情報基準」は国土交通省が策定した基準で、工事・測量・調査・地質・広報・設計の各写真の原本を電子媒体で提出する際の「属性情報等の標準仕様」を定めたものです。最新版は令和5年3月に公表されています。

国土交通省が公表している「デジタル写真管理情報基準」(令和5年3月版)の「1 適用」には、次のように記載されています。

「本基準」は、写真(工事・測量・調査・地質・広報・設計)の原本を電子媒体で提出する場合の属性情報等の標準仕様を定めたものである。

つまりこの基準は、撮影した写真そのものの構図やタイミングを細かく指図するものではなく、電子データとして納品する際のファイル形式・ファイル名の付け方・写真1枚ごとに紐づける情報(撮影日時、工種、写真区分など)の書式を全国共通で揃えるための技術仕様です。

一次資料で確認できませんでした:この基準を国土交通省内のどの部局が策定したかは、公表PDFの本文からは確認できませんでした(表紙に「国土交通省」とのみ記載)。また、公表PDF本文には地方公共団体発注工事への準用・適用範囲に関する記載自体がなく、福島県発注工事(土木・営繕とも)にこの基準がどこまで準用されるかを明記した福島県側の文書も確認できていません。したがって「国土交通省直轄工事を中心とした基準」という位置づけは一次資料からの断定はできず、確認できた事実(適用対象は写真の原本を電子媒体で提出する場合の属性情報等の標準仕様であること)にとどめて理解してください。

制度の概要

「デジタル写真管理情報基準」が定める工事写真の区分と、電子データとしての構造は次のとおりです。

写真区分 内容
着手前及び完成写真 既済部分写真等を含む
施工状況写真 施工中の状況
安全管理写真 安全対策の実施状況
使用材料写真 使用した材料の確認
品質管理写真 品質管理の記録
出来形管理写真 出来形寸法等の管理記録
災害写真/事故写真 災害・事故発生時の記録
その他 公害、環境、補償等
一次資料で確認できた事実:国土交通省「デジタル写真管理情報基準」(令和5年3月)では、写真管理ファイルの形式として「XML形式(XML1.0に準拠)」、写真ファイルの形式として「JPEG、TIFFやSVG形式等」が定められています。

一方、福島県が公共建築工事向けに定めている「建築関係工事写真管理基準」(平成28年2月3日制定、令和4年2月17日一部改定)は、撮影する場面をもっと実務的に、次の3段階と5つの目的で説明しています。

撮影段階 撮影内容
工事着工前 敷地全体、敷地周囲、障害物、進入路、排水路など現状の記録
工事施工中 監督員の立会・検査を要する箇所、完成後に不可視となる箇所
工事完成後 入居前の時期に外観4面など監督員指示箇所を撮影

この基準は建築工事編・電気設備工事編・機械設備工事編・撤去解体工事編に分かれた「撮影対象表」を別紙として持ち、工種ごとに撮影すべき箇所を具体的に示しています。

資料のポイント解説

黒板の記載事項
福島県「建築関係工事写真管理基準」は、被写体に添える小黒板の標準記載項目として「図2」を示しており、次の6項目が挙げられています。

  • ①工種
  • ②位置
  • ③設計寸法
  • ④実測寸法
  • ⑤略図
  • ⑥その他

基準では「被写体に工種、位置、撮影内容等を明記した小黒板等を添えて、被写体の内容がわかるように撮影する」とされ、台紙側に同じ説明がある場合は台紙への記入を省略できるとされています。

電子小黒板の扱い
同基準の第4章「デジタル工事写真の小黒板情報電子化」では、小黒板情報を電子的に処理する場合の条件が定められています。要点は次のとおりです。

  • 使用する機器・ソフトは「信憑性確認(改ざん検知機能)を有するもの」であること
  • 「電子政府における調達のために参照すべき暗号のリスト(CRYPTREC暗号リスト)」に記載された技術を採用していること
  • 被写体と小黒板情報を電子画像として同時に記録できること
  • 納品時は「チェックシステム(信憑性チェックツール)」で確認し、確認に用いたソフト名を電子媒体に記載すること

ファイル形式・画素数
技術的な基準は、国土交通省の基準と福島県の基準でそれぞれ示されています。

項目 国土交通省「デジタル写真管理情報基準」(R5.3) 福島県「建築関係工事写真管理基準」
写真ファイル形式 JPEG、TIFFやSVG形式等 原本は撮影時のJPEG
有効画素数 100~300万画素程度 100万画素以上
電子媒体 (本基準では言及なし) CD-Rを原則とし、それ以外は監督員の承諾が必要
プリンタ出力 (本基準では言及なし) フルカラー300dpi以上

国土交通省の基準では、写真ファイルの命名規則も定められており、写真ファイルは「Pnnnnnnn.JPG」、参考図ファイルは「Dnnnnnnn.XXX」のように、8文字以内のファイル名と半角英数大文字の拡張子で構成することとされています。

一次資料で確認できませんでした:福島県の建築工事において、写真ファイルの命名規則やXML属性情報の記載方法を国土交通省の基準どおりに適用するかどうかは、確認した資料からは読み取れませんでした。福島県側の基準は主に紙媒体のアルバム編成と電子小黒板の信憑性確認に重点を置いており、国土交通省基準にあるファイル命名規則との整合性は明記されていません。

実務上の注意点

  • 二つの基準を混同しない。国土交通省「デジタル写真管理情報基準」は電子データの標準仕様(ファイル形式・命名規則等)を定める全国共通の技術基準です。一方、福島県「建築関係工事写真管理基準」は、いつ・何を・どう撮るか、黒板に何を書くかを定める県独自の実務基準です。入札参加時にはどちらを参照すべきか案件ごとに確認してください。
  • 適用開始日に注意する。福島県の基準は「令和4年4月1日以降起工するもの」から現行版(令和4年2月17日改定)が適用されます。それ以前に着工した工事や別の発注区分では、旧版(平成29年4月27日改定版など)が参照される場合があります。
  • 提出先の要領は最新版を確認する。福島県「建築関係工事写真管理基準」の本文は、写真の電子媒体提出について「営繕工事電子納品要領(案)」及び「福島県電子納品運用ガイドライン(営繕工事編)」(平成19年11月福島県土木部)によると定めています。ただし、これは基準本文に書かれた制定当時の参照先であり、福島県の電子納品案内ページで確認できる現行文書は「福島県電子納品運用ガイドライン【営繕工事編】」(令和8年3月23日改定が最新、令和7年4月版・令和7年3月17日版・令和3年10月版という改定履歴あり)のみで、「営繕工事電子納品要領(案)」という名称の文書は同ページに見当たりません。名称が変わっている可能性があるため、写真管理基準だけでなく、電子納品案内ページで最新のガイドラインを別途確認してください。
  • 編集は原則認められない。基準では工事写真の編集は認めないとされており、計画道路の記入や小黒板の電子化、監督員の指示があった場合を除いて、撮影後の加工は想定されていません。
  • 撮影対象表を必ず確認する。福島県の基準には建築工事編・電気設備工事編・機械設備工事編・撤去解体工事編ごとの「撮影対象表」が別紙として付いており、工種ごとに撮影すべき箇所が示されています。工種を誤って別編の対象表を参照しないよう注意してください。
注意:本稿は撮影・整理・提出のルールを整理したものであり、これらの作業にかかる費用をどの積算科目に計上するかについては、確認できた一次資料の範囲では言及がありません。積算基準そのものについては別稿を参照してください。

よくある質問

Q1. 国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」を読めば、福島県の建築工事の写真の撮り方も分かりますか。
A. 分かりません。国土交通省の基準は電子データの形式(ファイル形式や写真管理ファイルの属性情報)を定めたものです。実際にいつ・何を撮るか、黒板に何を書くかは、福島県が別途定める「建築関係工事写真管理基準」で確認する必要があります。

Q2. 黒板は手書きでなければいけませんか。
A. 福島県の基準には「デジタル工事写真の小黒板情報電子化」という章があり、改ざん検知機能を備えた機器・ソフトを使い、信憑性チェックツールで確認するなどの条件を満たせば、電子的に処理した小黒板情報も認められると定められています。

Q3. 工事写真は第94号様式で提出すると聞きましたが、写真管理基準との関係は何ですか。
A. 第94号様式は、しゅん工図書としての工事写真の提出様式です(詳細は第142回の記事を参照)。写真そのものをどう撮影し、どう整理するかを定めているのが本稿で扱った写真管理基準であり、様式番号と撮影基準は別の資料に定められています。

まとめ

  • 国土交通省「デジタル写真管理情報基準」(令和5年3月)は、写真データを電子媒体で提出する際の属性情報・ファイル形式の標準仕様を定めた全国共通の技術基準である。
  • 福島県「建築関係工事写真管理基準」(令和4年2月17日改定、令和4年4月1日以降起工に適用)は、着工前・施工中・完成後の撮影内容、黒板記載事項、電子小黒板の条件を定めた県独自の実務基準である。
  • 黒板の標準記載事項は工種・位置・設計寸法・実測寸法・略図・その他の6項目。
  • 写真の提出・電子納品は写真管理基準本文が引用する「営繕工事電子納品要領(案)」及び「福島県電子納品運用ガイドライン(営繕工事編)」(平成19年11月)だけでなく、福島県電子納品案内ページで確認できる現行の「福島県電子納品運用ガイドライン【営繕工事編】」(令和8年3月23日改定が最新)もあわせて確認する。
  • 公共建築工事の入札に参加する場合は、対象工事の起工日を確認したうえで、該当する版の福島県基準と撮影対象表を事前に取り寄せておくと、施工中の手直しを防げる。

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