【令和8年積算基準】公共建築工事の共通費とは?共通仮設費・現場管理費・一般管理費等をわかりやすく解説

共通費とは何か(全体構成)

公共建築工事の工事費は、大きく「直接工事費」「共通費」「消費税等相当額」の3つで構成されます。このうち共通費は、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等の3区分に分かれています。

共通費の位置づけ
国土交通省大臣官房官庁営繕部において、公共建築工事の工事費は「公共建築工事積算基準」の定めにより、直接工事費、共通費及び消費税等相当額で構成されます。共通費は「公共建築工事共通費積算基準」(以下「共通費基準」)の定めにより算定され、必要となる費用を積み上げにより算定するか、過去の実績等に基づいた各共通費の率(共通仮設費率・現場管理費率・一般管理費等率)により算定することとされています。一般的には、共通費基準に定められた各共通費の率により算定し、率に含まれない内容については、必要に応じ別途積み上げにより算定し、加算します。根拠は国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」(令和8年改定)です。

この記事では、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等それぞれの内容と算定方法、費用構造全体の関係、率計算と積み上げ計算の使い分け、設計変更時の取り扱いまで、共通費に関する説明を1本にまとめて網羅的に解説します。

共通仮設費とは

共通仮設費は、共通費の3区分のうち最初に位置する費用で、工事現場全体で共通的に必要となる仮設的な費用を指します。特定の工種に帰属しない、いわば「現場を動かすための共通コスト」です。直接工事費(実際の工事作業にかかる費用)とは別に、現場全体の準備・安全・仮設建物・動力・機械器具など、工事を進めるために共通的に必要な費用の一式を計上します。

率計算に含まれる8項目

共通仮設費の内容は共通費基準の表-1に規定されており、9項目(令和8年改定で情報システム費が追加)で構成されています。一般的な率計算では、次の内容が含まれます(建築工事の場合、共通費基準 表-5)。

項目含まれる費用の内容
準備費敷地整理(新営の場合)、道路占有のための準備及び現状復旧に要する費用、その他の準備に要する費用
仮設建物費監理事務所(敷地内)、現場事務所(敷地内)、倉庫、下小屋、作業員施設等に要する費用
工事施設費場内通信設備等の工事用施設に要する費用
環境安全費安全標識、消火設備等の施設の設置、安全用品等(墜落制止用器具〈フルハーネス型〉を含む)、隣接物等の養生及び補償復旧に要する費用。台風等災害に備えた災害防止対策に要する費用のうち一般的なもの
動力用水光熱費工事用電気設備及び工事用給排水設備に要する費用並びに工事用電気・水道料金等
屋外整理清掃費屋外・敷地周辺の跡片付け及びこれに伴う発生材処分並びに端材等の処分に要する費用
機械器具費測量機器及び雑機械器具に要する費用
その他公共建築工事標準仕様書に基づく試験費、レディーミクストコンクリートの単位水量試験費、特記仕様書にて定める試験のうち軽微な試験費、その他上記のいずれの項目にも属さないもののうち軽微なものの費用
注意:電気設備工事・機械設備工事・昇降機設備工事の場合は、適用される率の表が異なります(表-6)。建築工事と電気・機械設備工事では、仮設建物費の内容(監理事務所の扱い等)や工事施設費の内容に差異があります。

積み上げとは

共通仮設費の算定方法は、比率(率)による算定と、積み上げによる算定の2種類があります。一般的な公共建築工事では率計算が基本ですが、基準には「共通仮設費率に含まれない内容については、必要に応じ別途積み上げにより算定して加算する」(共通費基準 第2条第2項)という重要な規定があります。つまり、率計算で対応できない費用が生じる場合は、その分だけ積み上げで別途計上するという構造になっています。

積み上げの具体例:躯体・仕上工事用揚重機
国交省が公表している算定例(令和8年版)では、新営建築工事の算定例として「躯体・仕上工事用揚重機」が積み上げ分として明示されています。共通仮設費率においては、共通的に使用する揚重機械器具に要する費用が含まれないため、共通仮設費率により算定した費用に揚重機械器具に要する費用を積み上げにより算定し、加算する必要があります。

表-5の「機械器具費」には「測量機器及び雑機械器具」が含まれますが、躯体・仕上工事用の揚重機械(大型クレーン等)は工事の規模や形態によって費用が大きく異なるため、率の中には含まれず、別途積み上げで計上する扱いになっています。

率に含まれない費用の詳細(現場環境改善費等)については、後述の「共通仮設費率に含まれない費用」でまとめて解説します。

現場管理費とは

現場管理費は、工事現場の運営・管理にかかる費用の一式です。直接工事費と共通仮設費を合計した「純工事費」をベースに算定します。つまり、現場で実際に工事を動かすための費用(直接工事費+共通仮設費)の上に乗っかる、現場組織の維持・管理コストがここに計上されます。

含まれる費用の内容

現場管理費に含まれる費用は共通費基準の表-2に規定されています。主なものを整理します。

項目含まれる費用の内容(概要)
労務管理費現場雇用労働者・現場雇用従業員・現場労働者の労務管理に要する費用(募集・解散費、慰安・娯楽・厚生費、安全衛生・研修費、労災保険法による給付以外の事業主負担分等)
租税公課工事契約書等の印紙代、申請書・謄抄本登記等の証紙代、固定資産税・自動車税等の租税公課、諸官公署手続き費用
保険料火災保険、工事保険、自動車保険、組立保険、賠償責任保険、法定外の労災保険及びその他の損害保険の保険料
従業員給料手当現場従業員(元請企業の社員)及び現場雇用従業員・現場雇用労働者の給与、諸手当(交通費、住宅手当等)、賞与及び外注人件費(施工図等作成費を除く)
施工図等作成費施工図・完成図等の作成に要する費用
退職金現場従業員に対する退職給付引当金繰入額及び現場雇用従業員・現場雇用労働者の退職金
法定福利費現場従業員等に関する労災・雇用・健康・厚生年金保険の事業主負担額、現場労働者に関する労災保険料の事業主負担額
建設業退職金共済契約に係る掛金建設業退職金共済制度に基づく証紙購入代金(令和8年改定で法定福利費から分離・独立)
福利厚生費現場従業員に対する慰安・娯楽・厚生・貸与被服・健康診断・医療・慶弔見舞等に要する費用
事務用品費事務用消耗品費、OA機器等の事務用備品費、新聞・図書・雑誌等の購入費、工事写真・完成写真代等
通信交通費通信費、旅費及び交通費
補償費工事施工に伴って通常発生する騒音・振動・濁水・工事用車両の通行等に対して近隣の第三者に支払われる補償費(ただし電波障害等に関する補償費を除く)
その他会議費、式典費、工事実績の登録等に要する費用、各種調査に要する費用、その他上記のいずれの項目にも属さない費用

率計算の仕組み

現場管理費は、純工事費(Np)と工期(T)を変数とする算定式(Jo)で率を求め、純工事費に乗じて算定します。算定式は工事種別・新営・改修によって異なります。

【新営建築工事】
Jo = Exp(5.899 − 0.447 × loge Np + 0.831 × loge T)
Jo:現場管理費率(%) Np:純工事費(千円) T:工期(か月)
適用範囲:10,000千円 ≦ Np ≦ 5,000,000千円
算定例(新営建築工事)
直接工事費:165,520,850円、工期:10.3か月の場合
共通仮設費(率4.12%)+積み上げ分を加えた純工事費:約173,632,000円として計算すると
Jo = Exp(5.899 − 0.447 × loge(173,632.309)+ 0.831 × loge(10.3))= 11.52%
(出典:国交省「公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例(令和8年)」)

Joの値は小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとします。また、純工事費には処分費を含まない点に注意が必要です(詳細は後述の「処分費の扱い」)。

率に含まれない特記事項と積み上げ

現場管理費率に含まれない「特記事項」については、別途積み上げにより算定して加算します(基準第3条第2項)。

補足:支給材料・貸与品使用時の加算
発注者から支給された材料や貸与品を使用する場合、評価額の2%を現場管理費に加算する取り扱いがあります。これは特記事項として設計書に明記される費用であり、率計算とは別に積み上げ計上されます(福島県工事請負契約約款第15条関係)。

一般管理費等とは

一般管理費等は、共通費の3区分の最後に計上される費目です。純工事費に現場管理費を加えた「工事原価」をベースに算定します。一般管理費等は工事現場の費用(直接工事費・共通仮設費・現場管理費)とは異なり、建設会社の本店・支店の運営コスト(役員報酬・本社従業員給料・研究開発費・広告宣伝費等)と付加利益等(法人税・株主配当・内部留保金等)で構成されます。

含まれる費用の内容

一般管理費等は「一般管理費」(表-3)と「付加利益等」(表-4)の2つで構成されます。

項目内容(概要)
役員報酬等取締役及び監査役に要する報酬及び賞与(損金算入分)
従業員給料手当本店及び支店の従業員に対する給与、諸手当及び賞与
退職金本店及び支店の役員及び従業員に対する退職金
法定福利費本店及び支店の従業員に関する労災・雇用・健康・厚生年金保険の事業主負担額
修繕維持費建物、機械、装置等の修繕維持費、倉庫物品の管理費等
動力用水光熱費電力、水道、ガス等の費用(本支店の管理費用)
調査研究費技術研究、開発等の費用
地代家賃事務所、寮、社宅等の借地借家料
減価償却費建物、車両、機械装置、事務用備品等の減価償却額
開発償却費新技術・新経営組織の採用、資源開発・市場開拓のため特別に支出した費用の償却額
租税公課不動産取得税、固定資産税等の租税及びその他の公課
保険料火災保険その他の損害保険料
契約保証費契約の保証に必要な費用
雑費社内打合せの費用、諸団体会費等の上記のいずれの項目にも属さない費用

付加利益等(表-4)には、法人税・都道府県民税・市町村民税等(表-3の租税公課に含むものを除く)、株主配当金、役員賞与(損金算入分を除く)、内部留保金、支払利息及び割引料・支払保証料その他の営業外費用が含まれます。

算定式と率の読み方

一般管理費等率(Gp)は、工事原価(Cp)を変数とする対数式で算定します。

令和8年改定の算定式(建築・電気設備・機械設備・昇降機設備工事共通)
Gp = 32.597 − 3.591 × log10(Cp)
Gp:一般管理費等率(%) Cp:工事原価(千円)
適用範囲:300万円 < Cp ≦ 30億円
工事原価 ≦ 300万円 の場合:固定値 20.11%
工事原価 > 30億円 の場合:固定値 9.34%

算定式には常用対数(log10)を使用します(共通仮設費・現場管理費の算定式が自然対数を使うのとは異なる点に注意)。Excelで計算する場合はLOG10関数を用います。Gpの値は小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとします。

令和8年改定のポイント

令和8年改定前は、建築工事・電気設備工事・機械設備工事・昇降機設備工事でそれぞれ異なる算定式(別表-15〜17の3本)が設定されていました。令和8年改定で4工種が共通の1本の算定式(別表-15)に統一されました。

改定前(令和7年以前)改定後(令和8年)
建築工事Gp=28.978-3.173×log10(Cp)Gp=32.597-3.591×log10(Cp)
(4工種共通)
電気設備工事Gp=29.102-3.340×log10(Cp)
機械設備工事Gp=27.283-3.049×log10(Cp)
昇降機設備工事Gp=27.283-3.049×log10(Cp)

改定前と比べると定数が大きくなっており、同じ工事原価でもGpが高くなる方向に改定されています。

工事費の構造(純工事費・工事原価・工事価格・工事費)

ここまで見てきた共通仮設費・現場管理費・一般管理費等は、それぞれ異なる「ベース金額」に対する比率で算定されます。積算では費用を積み上げていく過程でいくつかの中間合計が登場するため、用語を正確に理解しておくことが重要です。

工事費の全体構成(令和8年改定 共通費基準・算定方法資料より)
直接工事費各工種の実際の工事にかかる費用
+ 共通仮設費
純工事費(Np)直接工事費 + 共通仮設費
+ 現場管理費
工事原価(Cp)純工事費 + 現場管理費
+ 一般管理費等
工事価格工事原価 + 一般管理費等
+ 消費税等相当額
工事費工事価格 + 消費税等相当額

直接工事費は、各工種の施工に直接かかる費用です。材料費・労務費・機械器具費等から構成され、共通費を算定する際の「P(直接工事費)」として使われます。

純工事費(Np)は直接工事費と共通仮設費の合計で、現場管理費率(Jo)の算定変数として使われます。「純」という言葉が含まれていますが、これは「純粋な工事費」という意味ではなく、現場で実際に施工するためにかかる費用の合計と理解するとよいでしょう。

工事原価(Cp)は純工事費と現場管理費の合計で、一般管理費等率(Gp)の算定変数として使われます。一般管理費等は「本店・支店の管理コスト」であり、現場から見た「原価」(工事原価)の上に乗せる形で算定するため、この名称になっています。

算定変数の整理
共通仮設費率 Kr → 変数:直接工事費(P)・工期(T)
現場管理費率 Jo → 変数:純工事費(Np)・工期(T)
一般管理費等率 Gp → 変数:工事原価(Cp)(工期は使わない)

各率の算定変数が「前の段階の合計額」になっているため、計算順序を間違えると誤った率が出ます。

工事原価に一般管理費等を加えると工事価格になり、さらに消費税等相当額を加えた最終的な合計が工事費です。公共建築工事内訳書標準書式(国交省)では、発注者が公表する工事費の構成として「直接工事費+共通費+消費税等相当額」という整理が使われています。

予定価格との関係:発注者が積算して設定する予定価格は、基本的に「工事費」(消費税込み)の段階の金額です。入札者は予定価格を上限として入札するため、積算の最終ゴールとなる金額です。

率計算と積み上げ計算の違い

共通費基準では、共通仮設費・現場管理費の算定方法として「比率(率)による算定」と「積み上げによる算定」の2種類が規定されています。一般管理費等については「工事原価に対する比率により算定する」とされており、積み上げによる算定は原則規定されていません。

率計算の特徴

  • 過去の実績データをもとに統計的に算出された算定式を使い、費用を一括で計算する方法
  • 国交省が提示する算定式(Kr・Jo・Gp)をそのまま使用できるため、計算が効率的
  • 「一般的な市街地」を前提とした率であり、施工条件が標準的な工事に適している
  • 直接工事費・純工事費が大きいほど率が下がり(規模の経済)、工期が長いほど率が上がる傾向がある

積み上げ計算の特徴

  • 費用項目ごとに必要な金額を個別に見積もって合計する方法
  • 工事ごとの実態に即した金額を計上できる
  • 特殊な施工条件(遠隔地・山間部・大規模仮設等)がある場合に適している
  • 費目ごとに根拠資料(見積書・数量計算書等)が必要となる

実務での組み合わせ方

公共建築工事では、率計算が基本です。ただし、「率に含まれない内容」については別途積み上げで加算します。これが「率計算+積み上げの組み合わせ」という実務上の取り扱いです。

費目基本の算定方法積み上げが必要な場合
共通仮設費率計算(Kr)揚重機械器具・現場環境改善費・工事場所以外の屋外整理清掃費・新たな施策等の試行による特別な費用
現場管理費率計算(Jo)特記事項(支給材料使用時の加算等)
一般管理費等率計算(Gp)
(積み上げ規定なし)
契約保証費(必要に応じて別途加算)・住宅瑕疵担保履行法による資力確保措置のための費用
算定例(新営建築工事)での実際の組み合わせ
国交省の算定例(令和8年)では、共通仮設費について:
直接工事費(165,520,850円)×共通仮設費率(4.12%)=率計算分
+ 躯体・仕上工事用揚重機 1,292,000円(積み上げ分)
= 共通仮設費合計

この「率計算分+積み上げ分」の組み合わせが標準的な取り扱いです。

共通仮設費率に含まれない費用

共通仮設費は通常「率計算(Kr)」で算定しますが、基準には「率に含まれない費用」が明示されており、これらは率計算とは別に積み上げで計上する必要があります。

共通費基準(令和8年改定)第2条第3項の規定
共通仮設費率に含まれる内容は表-5及び表-6による。ただし、設計図書に基づく以下の費用は含まれない:
・現場環境改善費
・工事場所以外の屋外整理清掃費
・新たな施策等の試行による特別な費用

現場環境改善費

作業員の現場就労環境の向上を目的とした設備費用です。一般的な仮設建物や安全設備は率に含まれていますが、現場環境改善の観点から設計図書に特別に定められた仕様を超える水準の設備については、別途積み上げで計上する扱いとなっています。

補足:現場環境改善費の具体的な内容(休憩施設・男女別更衣室・快適トイレ等の整備に要する費用の詳細)は、国土交通省「公共建築工事積算基準等資料」に規定されています。同資料はプロジェクト内のPDFでは確認できていないため、詳細については国土交通省官庁営繕ホームページの公開資料をご確認ください。

工事場所以外の屋外整理清掃費

共通仮設費率(表-5)の「屋外整理清掃費」には「屋外・敷地周辺の跡片付け及びこれに伴う発生材処分並びに端材等の処分に要する費用」が含まれています。これに対して「工事場所以外」での屋外整理清掃費は率の対象外です。たとえば、工事現場から離れた場所での整理・清掃作業が必要な場合、その費用は別途積み上げで計上します。

新たな施策等の試行による特別な費用

国土交通省や地方公共団体が新たな政策・施策として試行する取り組みに伴い生じる特別な費用を指します。通常の工事では発生しない、施策試行固有のコストが対象です。

「設計図書に基づく」という前提
上記3つの費用はいずれも「設計図書に基づく」場合に率の対象外となります。設計図書(特記仕様書等)に現場環境改善の内容や施策試行に関する仕様が定められている場合に限り、別途積み上げで計上されます。設計図書に記載のない費用を任意に積み上げることは、この規定の対象外です。

金抜設計書での確認方法

金抜設計書の共通費の欄で、共通仮設費の「積み上げ分」として別途計上項目がある場合、それが率計算に含まれない費用に該当します。次の点を確認することで、設計書の読み解きに役立ちます。

  • 共通仮設費の合計が「直接工事費×率」より大きい場合 → 積み上げ分が加算されている
  • 積み上げ分の内訳として「揚重機」「現場環境改善費」等の項目がある場合 → それぞれが個別計上されている
  • 積み上げ分がない場合 → 率計算のみで共通仮設費が構成されている

処分費の扱い

国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」(令和8年改定)には、共通仮設費・現場管理費の率計算に使うベース金額について、明確なルールが定められています。

基準の規定(令和8年改定 第2条第1項・第3条第1項)

共通仮設費の算定(第2条第1項):
「ただし、共通仮設費率を算定する場合の直接工事費には、処分費を含まないものとする。」

現場管理費の算定(第3条第1項):
「ただし、現場管理費率を算定する場合の純工事費には、処分費を含まないものとする。」

つまり、共通仮設費率(Kr)の変数Pに代入する直接工事費と、現場管理費率(Jo)の変数Npに代入する純工事費は、どちらも処分費を除いた金額で計算します。

なぜ除外するのか

処分費とは、解体・撤去工事等で発生した廃棄物等の処分にかかる費用です。直接工事費の構成項目の一つとして計上されますが、共通費率の算定ベースからは除外するという扱いになっています。その理由は、処分費は工事の種別・規模によって極端にばらつきが生じやすい費用だからです。大規模な解体工事では処分費が直接工事費の大きな割合を占める場合があり、そのまま率計算のベースに含めると共通費が実態より過大に算定されてしまいます。

処分費が除外される理由(まとめ)
処分費は工事の種別・規模・廃棄物の種類により金額が大きく変動するため、過去の実績に基づく「率」での計算に馴染まない費用です。処分費を除外することで、率計算の精度(実態との乖離を小さくすること)を高める設計になっています。

スクラップ(有価物)との違い

処分費と混同しやすい費用として「スクラップ(有価物)」があります。両者の違いを整理します。

処分費スクラップ(有価物)
性質廃棄物の処分にかかるコスト(費用=プラス計上)解体・撤去で生じた金属等の売却収入(収入=マイナス計上)
率計算の扱い直接工事費・純工事費から除外同様に率計算のベースから除外
設計書上の扱い直接工事費合計にプラスで含まれる直接工事費合計にマイナスで含まれる(計上済み)
二重控除に注意:スクラップ(有価物)は金抜設計書の直接工事費合計にすでにマイナス計上されています。率計算のベースとなる直接工事費(P)を計算する際に「さらにスクラップ分を差し引く」と二重控除になってしまいます。率計算のベースから除外する「処分費」は、直接工事費の中でプラス計上されている処分費を除くという操作です。スクラップはすでにマイナスで計上されているため、追加の控除は不要です。

実務での確認ポイント

金抜設計書を確認する際、共通費の計算根拠を追う場合は次の点を確認します。

  • 直接工事費の内訳に「処分費」の計上があるか確認する
  • 共通仮設費率(Kr)の算定に使う「P(直接工事費)」が、処分費を除いた金額になっているかを確認する
  • 同様に現場管理費率(Jo)の算定に使う「Np(純工事費)」も処分費除外後の金額であることを確認する

積算ソフトを使用している場合は、処分費の費目設定(「率対象外」フラグ等)が適切に設定されているかを確認することで、この処理が正しく行われているか確認できます。

製造業者・専門工事業者への単独発注

共通費基準では、製造業者・専門工事業者に単独発注する場合の共通費の扱いについて、明確なルールが3か所に規定されています。

単独発注時の共通費規定(令和8年改定 共通費基準)

共通仮設費(第2条第4項):
「昇降機設備工事を除く製造業者・専門工事業者に単独発注する場合は、別途共通仮設費を算定する。」

現場管理費(第3条第4項):
「昇降機設備工事を除く製造業者・専門工事業者に単独発注する場合は、別途現場管理費を算定する。」

一般管理費等(第4条第3項):
「昇降機設備工事を除く製造業者・専門工事業者に単独発注する場合は、別途一般管理費等を算定する。」

なぜ別途算定が必要か

通常の公共建築工事では、建築工事・電気設備工事・機械設備工事等が一体の工事として発注され、共通費率の算定式(Kr・Jo・Gp)をそのまま適用します。しかし、製造業者や専門工事業者に特定の工種だけを単独で発注する場合は事情が異なります。単独発注の場合、発注先の業者が現場全体の管理・運営コストを負担するのではなく、自社製品の製造・設置に特化した業務だけを担うケースが多いためです。そのため、標準の算定式(一般的な市街地における実績ベースの率)をそのまま適用するのではなく、その発注形態に応じた別途算定が求められます。

「別途算定」の意味
「別途算定する」とは、標準の算定式(Kr・Jo・Gp)をそのまま使うのではなく、その発注形態の実態に合わせて個別に共通費を算定するということです。具体的な算定方法については、国土交通省「公共建築工事積算基準等資料」等に詳細が示されています。

昇降機設備工事の例外

上記の「別途算定」ルールには「昇降機設備工事を除く」という重要な例外があります。昇降機設備工事については、製造業者・専門工事業者への単独発注であっても、基準の算定式(Kr・Jo・Gp)をそのまま適用します。昇降機設備工事の共通費率には専用の別表が設定されており(別表-7・別表-14・別表-15)、単独発注の場合でも通常の率計算の枠組みに含まれる扱いになっています。

工事種別・発注形態共通仮設費現場管理費一般管理費等
建築・電気・機械設備工事
(通常の工事として発注)
算定式(Kr)で率計算算定式(Jo)で率計算算定式(Gp)で率計算
建築・電気・機械設備工事
(製造業者・専門業者に単独発注)
別途算定別途算定別途算定
昇降機設備工事
(単独発注含む)
算定式(Kr:別表-7)で率計算算定式(Jo:別表-14)で率計算算定式(Gp:別表-15)で率計算
昇降機設備工事の算定式の特徴
昇降機設備工事の共通仮設費率(別表-7):
Kr = Exp(4.577 − 0.323 × loge P)(工期Tの項なし)

現場管理費率(別表-14):
Jo = Exp(7.438 − 0.448 × loge Np)(工期Tの項なし)

他の工事種別の算定式と異なり、工期(T)が変数に含まれません。昇降機設備工事は工事規模(直接工事費・純工事費)のみで率が決まる構造になっています。

設計変更時の計算方法

公共建築工事で設計変更が生じた場合、直接工事費だけでなく共通費も連動して変更されます。共通費の設計変更における計算には2つの重要な原則があります。

設計変更の2原則(令和8年改定 共通費基準 第2条第5項・第3条第5項)

原則①:算定方法の踏襲
当初設計で率計算を採用した場合は変更設計も率で計算、積み上げを採用した場合は変更設計も積み上げで計算する。

原則②:差額計算方式
設計変更分の共通費は、変更内容を当初発注工事内に含めた場合の共通費から、当初発注工事の共通費を控除した額とする。

差額計算の仕組み

設計変更後の共通費を直接計算するのではなく、「変更内容を含めた場合の全体の共通費」−「当初発注工事の共通費」=「変更分の共通費」という差額計算で求めます。

差額計算の手順(共通仮設費の例)
① 変更内容を当初発注工事内に含めた場合の直接工事費を仮計算する
② その仮直接工事費と当初工期(または変更工期)で共通仮設費率を再計算する
③ ②で求めた共通仮設費 − 当初共通仮設費 = 設計変更分の共通仮設費

現場管理費・一般管理費等も同じ差額計算の構造になります。

費目ごとの扱い

共通仮設費を率で算定した場合は、変更後の直接工事費(P')・工期(T')を算定式に代入して新たなKrを求め、差額を算定します。現場管理費も同様に、変更後の純工事費(Np')・工期(T')を算定式に代入して新たなJoを求め、差額を算定します。一般管理費等は、変更後の工事原価(Cp')を算定式に代入して新たなGpを求め、差額を算定します。

一般管理費等の設計変更における注意事項
基準第4条第4項ただし書きにより、設計変更においては契約保証費にかかる補正を行わないと規定されています。当初設計で契約保証費の補正を行っていた場合でも、変更設計での契約保証費加算は対象外です。

注意が必要なケース

工期が変更になる場合:工期が変更される設計変更(工期延長等)の場合は、共通仮設費率・現場管理費率の工期(T)変数も更新されます。工期が長くなると率が上がる傾向にあるため、直接工事費の変動がなくても共通費が増減する可能性があります。

処分費が変更になる場合:率計算のベースとなる直接工事費・純工事費には処分費を含まないため、変更内容に処分費の増減が含まれる場合でも率計算のベースから除外して計算します。

実務上の確認ポイント
設計変更の精算では、変更前後で「当初設計の共通費合計」と「変更後の共通費合計」の差が変更分として計上されます。金抜設計書の変更設計書で共通費が増減している場合、その変動が直接工事費の変動に対して妥当かどうかを確認するには、差額計算の構造を理解しておくことが重要です。なお、設計変更の具体的な計算根拠は変更設計書(根拠計算書)で確認できます。

まとめ

公共建築工事の共通費は、共通仮設費(現場の共通コスト)・現場管理費(現場組織の維持管理コスト)・一般管理費等(本支店の運営コストと付加利益)の3区分から成り立っています。それぞれ直接工事費・純工事費・工事原価という異なるベース金額に対する算定式(Kr・Jo・Gp)で率を求め、率計算を基本としつつ、率に含まれない費用(揚重機・現場環境改善費・特記事項等)は別途積み上げで加算します。

処分費は共通費率の算定ベースから除外され、製造業者・専門工事業者への単独発注(昇降機設備工事を除く)では標準の算定式とは別に共通費を算定します。設計変更時は当初の算定方法を踏襲したうえで差額計算によって変更分を求めます。

これらの構造を一通り理解しておくことで、金抜設計書に記載された共通費の数字が「率計算の結果なのか」「積み上げ分を含むのか」「どのベース金額に対する率なのか」を正確に読み解けるようになります。

参考:国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事共通費積算基準(令和8年改定)」・「公共建築工事共通費積算基準改定内容(令和8年)」・「公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例(令和8年)」

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