執務並行改修の判定基準とは?全館無人改修との違いを積算基準から解説

執務並行改修の判定基準とは?全館無人改修との違いを積算基準から解説

改修工事の見積りで最初につまずく「分類」の考え方を、積算基準の原文に沿って整理します

積算担当の皆様、お疲れ様です!SEKISAN-PROです。改修工事の見積りで、実は一番最初につまずくのが「この工事は全館無人改修なのか、執務並行改修なのか」という分類そのものです。ここを間違えると、後工程の割増し判定・改修補正率の計算が全部やり直しになります。今回は判定基準を、積算基準の原文に沿って整理します。

1結論

まず押さえるポイント

  • 改修工事の分類は「執務状態」と「部位・方法」という2つの独立した軸で決まる
  • 執務状態の軸は「全館無人改修」と「執務並行改修」の2区分のみ
  • 建物内に執務者が1人でもいれば、養生シートや仮壁で区画していても執務並行改修に分類される
  • 割増し・補正の要否を左右するのは執務状態の軸だけ。部位・方法は分類を細かくするだけで割増し判定には直接関与しない
  • 増築工事の既存建物との取合い部分は、既存建物側の執務状態で判定する

2改修工事の分類は2つの軸で考える

令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」p.17(第1編9(1))では、改修工事の分類を2つの独立した軸で定めています。

内容区分
執務状態工事期間中、建物内に執務者がいるかいないか全館無人改修/執務並行改修
部位・方法工事の対象部位と範囲がどこか外部全面/外部部分/内部全面/内部部分

この2軸はそれぞれ独立しています。「執務状態」が割増し・補正の要否を決め、「部位・方法」はその中身をさらに細分化するためのものだと理解しておくと、後の話が整理しやすくなります。

3第1の軸:執務状態による区分

全館無人改修

定義:仮庁舎等が準備されている等、改修する建物全館が無人(執務者がいない)の状態で行う改修工事をいう。

仮庁舎への移転が完了し、対象建物に誰もいない状態での施工が前提です。執務者への配慮が不要なため、改修を理由とした労務の所要量の割増し・単価の補正は行いません。

執務並行改修

定義:建物に執務者がいる状態で行う改修工事をいい、施工場所と執務中の場所が区画されている状態の工事も含まれる。

施工場所を養生シートや仮壁で区画している場合でも、建物内に執務者がいれば執務並行改修に分類されます。施工業者が執務者に配慮しながら施工を行うことを前提として、工種ごとに割増し・補正が必要になります。

実務上の注意

「施工場所と執務場所を完全に区画している」という理由だけでは全館無人改修にはなりません。建物内に1人でも執務者がいれば執務並行改修です。区画の有無ではなく、建物内の執務者の有無で判定するのが原則です。

根拠:令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」(国土交通省)p.17 第1編9(1)ロ(イ)(ロ)

4第2の軸:部位・方法による区分

執務状態による2区分をさらに細かく区分するのが、部位・方法による4区分です。

外部全面改修

建物の屋根、外壁等の全面を改修する場合をいいます。屋根防水の全面改修、外壁タイルの全面打替え・全面吹替えなど、建物外部の広範囲を対象とする工事です。面積的な基準は積算基準に明記されていません。

外部部分改修

建物の屋根、外壁等の小規模で部分的な改修、及びそれらが点在する改修をいいます。外壁タイルの一部浮き補修、屋上防水の部分補修、外壁シーリング打替えなど。各所に点在する形の改修もここに含まれる点は見落としやすいポイントです。

内部全面改修

建物の内部全面を改修する場合をいいます。床・壁・天井の仕上材を建物内部の全フロア・全室にわたって改修するケースが該当します。

内部部分改修

部屋単位の床、壁、天井等の個別又は複合改修、及びそれらが点在する改修をいいます。間仕切り等の撤去・新設、又は設備改修等による取合い周辺部分の改修も、この内部部分改修に含まれます。設備改修のついでに発生する内装の取合い補修が地味に漏れやすいので注意してください。

根拠:令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」(国土交通省)p.17 第1編9(1)ハ(イ)〜(ニ)

52軸を組み合わせた全8分類

執務状態部位・方法割増し・補正
全館無人改修外部全面改修なし
全館無人改修外部部分改修なし
全館無人改修内部全面改修なし
全館無人改修内部部分改修なし
執務並行改修外部全面改修工種により割増し・補正あり
執務並行改修外部部分改修工種により割増し・補正あり
執務並行改修内部全面改修工種により割増し・補正あり
執務並行改修内部部分改修工種により割増し・補正あり

読み解きポイントは1つです。割増し・補正を左右するのは執務状態の軸だけで、部位・方法の軸はどれであっても結論は変わりません。全館無人改修なら部位・方法を問わず割増し不要、執務並行改修なら部位・方法を問わず工種ごとに表A-1・表E-1・表M-1の確認が必要になります。

根拠:令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」(国土交通省)p.17 第1編9(1)イ、および同(2)イ・ロ

6増築工事における注意点

増築工事については、積算基準に特別な取扱いが定められています。増築そのものではなく「既存建物と取り合う部分の改修工事」が対象です。

積算基準 原文

「また、増築工事においても既存建物と取り合う部分の改修工事については、既存建物の執務者の有無の状態により分類する。」

  • 既存建物に執務者がいる場合:既存建物との取合い改修は執務並行改修として分類し、工種ごとに割増し・補正を確認する
  • 既存建物が無人(仮庁舎移転済み等)の場合:既存建物との取合い改修は全館無人改修として分類し、割増し・補正は不要

増築工事では「増築部分」と「既存建物との取合い改修部分」を切り分けたうえで、取合い改修部分について既存建物の執務状態を確認する必要があります。設計図書の施工条件明示を必ず確認してください。

根拠:令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」(国土交通省)p.17 第1編9(1)ロ(ロ)後段

7分類が積算に与える影響

改修工事の分類は、単価の算定方法に直結します。

全館無人改修の場合(積算基準 原文)

「単価基準の第2編、第3編、第4編及び本資料に定められた複合単価、市場単価、補正市場単価、単位施工単価、補正単位施工単価のほか参考歩掛り等を使用する。改修を理由とした労務の所要量の割増し、単価の補正は行わない。」

執務並行改修の場合(積算基準 原文)

「施工業者が執務者に配慮等しながら施工を行う事を前提として、表A-1、表E-1及び表M-1のとおり、工種に応じて、複合単価、単位施工単価、補正単位施工単価については、労務の所要量の割増しを行い、市場単価及び補正市場単価は改修補正率を乗ずる。」

執務並行改修と判定された後、工種ごとに「割増しするか・しないか」を見ていく実務は「執務並行改修の割増し判定|工種別に「する・しない」を徹底整理」で、実際の金額の出し方(改修補正率の計算・労務所要量割増しの計算)は「執務並行改修の「改修補正率」計算方法|市場単価への掛け方を実例で解説」で解説していますので、判定が終わったらあわせてご確認ください。

根拠:令和8年改定「公共建築工事積算基準等資料」(国土交通省)p.17〜18 第1編9(2)イ・ロ

8よくある実務上の注意点

Q1. 外部全面・外部部分の区別に面積基準はあるか?

積算基準(p.17)に数値基準の明記はありません。「全面を改修する」か「小規模で部分的な改修」かは、設計図書に記載された施工条件・工事内容から判断します。判断が難しい場合は発注機関に確認するのが確実です。

Q2. 執務並行改修の「区画」は仮壁・養生シートでも該当するか?

はい、該当します。積算基準は「施工場所と執務中の場所が区画されている状態の工事も含まれる」と明記しており、養生シートや仮壁で区画していても執務並行改修です。ただし、執務並行改修に分類されることと割増しが発生することは別の話です。分類が決まったら、工種ごとに表A-1・表E-1・表M-1を個別に確認してください。

Q3. 屋上防水の全面改修と外壁タイルの部分補修が同時に発生する場合は?

工種・部位ごとに適切な区分を適用します。屋上防水改修が外部全面改修、外壁タイル補修が外部部分改修に該当する場合、それぞれの区分で積算します。1つの工事に複数の区分が混在するのは珍しくありません。

9福島県の積算担当者が注意すべきポイント

福島県での令和8年改定の適用時期は、発注機関が公表する通知を確認してください。例年、国の改定後に一定期間をおいて運用が開始される傾向があります。

確認事項内容
適用開始日発注機関の通知を確認
それまでの取扱い発注機関が採用する積算基準による
判定の考え方基本的な分類の考え方に大きな変更は見られない
確認先設計図書・発注機関

判定基準の枠組みは新旧基準で大きく変わるものではありませんが、割増し率・改修補正率の具体的な数値は改定の影響を受けます。適用日をまたぐ案件では、判定と金額計算のどちらの基準を使うか、発注機関に確認しておくと安心です。

分類手順の整理

① 建物内に執務者がいるか?
├─ いる → 執務並行改修
└─ いない → 全館無人改修
② 改修範囲はどこか?
├─ 外部全面改修
├─ 外部部分改修
├─ 内部全面改修
└─ 内部部分改修
③ 執務並行改修に該当する場合 → 表A-1・表E-1・表M-1を工種ごとに確認

まとめ

  • 改修工事の分類は「執務状態」と「部位・方法」の2軸で判断する
  • 執務状態は「全館無人改修」と「執務並行改修」の2区分
  • 建物内に執務者がいれば、区画の有無にかかわらず執務並行改修となる
  • 割増しや改修補正率に影響するのは執務状態の区分
  • 執務並行改修と判定された場合は、工種ごとに表A-1・表E-1・表M-1を確認する

こんな方におすすめ

  • 改修工事の見積りで「全館無人改修」か「執務並行改修」か迷っている方
  • 割増し・改修補正率の判定基準を確認したい方
  • 増築工事の既存建物取合い部分の扱いに悩んでいる方

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